3.11の津波で大きな被害を受けた岩手県陸前高田市。海岸沿いの7万本の松原のうち1本だけ残った “奇跡の一本松”が、市によって復興のシンボルとして保存されることに決まった。
驚くのはその保存方法。高さ約27メートルの松を根本から切り、幹を5分割して芯をくり抜き防腐処理を施す。そこに金属の心棒を埋め込んで、再び1本の木に組み立てるのだという。その費用、なんと1億5000万円!
7月5日、陸前高田市は「奇跡の一本松保存募金」を設立。ユニークなことに、Facebookも活用し、国内外から資金を募っている。
しかし、同市建設部によると、この1か月で目標額の10分の1ほどしか集まっていないという。従って、当初は復興支援の寄付金を積み立てている同市の「陸前高田市東日本大震災絆基金」に財源を求めることになるとのこと。
それだけに市民感情も複雑だ。冒頭のように「ぜひ残してほしい」という声がある一方で、「先にやるべきことがあるんじゃないのか」という声も根強い。いまでも市の沿岸部は堤防もなく更地が続いており、家屋の高台移転や商業復興も進んでいない。
「子供たちが通う小中学校の校庭には仮設住宅があって運動会もできない状態。一本松の保存はもちろんですが、生活面の問題も早く解決してほしい。難しい問題です」
「高田松原を守る会」副会長の小山芳弘さんは複雑な胸中を明かす。
※女性セブン2012年8月23・30日号