日々番組作りに追われるテレビマンにとって、無視できない組織がBPO(放送倫理・番組向上機構)だ。放送倫理を高め、番組の質を向上させるために、NHKや民放各局の出資によって2003年に作られた第三者機関だが、一方で「過剰な制約を押し付ける監視装置」という声も聞こえてくる。現場はどう考えているのか。3人の現役テレビマン(お台場A氏・汐留B氏・六本木C氏)が、匿名を条件に本音を語った。
――日テレのバラエティ番組『芸能★BANG+』が7月17日に打ち切りになった。過剰演出で、苦情が殺到した。
汐留B:「すぐさまBPOに番組の責任者が呼び出され、お叱りを受けたようです。その後、スタッフ全員の氏名や略歴といったプロフィール提出を要求された。“前科”がないか調べたのでしょうね。そして審議入りが発表されたと同時に番組の打ち切りが決定した」
お台場A:「いまのバラエティ番組の現場では、2009年11月にBPOが発表した『最近のテレビ・バラエティー番組に関する意見』(※)が指針となっているんです。それを見ていいか悪いか決めることになっている」
六本木C:「それに、どの局もリスクヘッジに重きを置いていますよね。象徴的なのが最近増えている画面上のテロップ。バラエティでも、出演者の過激な発言や裏の取れないものには、必ず『個人の意見です』という字幕を入れるし、罰ゲームには『医師のアドバイスの下で行なっています』と一言入れなければいけない」
お台場A:「ニュースや情報番組でも同じだよ。政治家の囲みや、会見の取材映像にまで『フラッシュの光にご注意ください』なんて注意書きを入れる」
汐留B:「視聴者の中には、『テロップが鬱陶しい』という人もいるでしょうが、私たちだって本当は入れたくないですよ。でも、何かあった後では責任取れませんから。過剰なテロップはテレビマンの自己防衛なんです」
※2009年11月17日付で発表された意見書。BPOに寄せられたバラエティ番組に関する批判を紹介しながら、今後はどう番組作りを行なうべきかについて、バラエティが嫌われる瞬間を「下ネタ」「イジメ」「内輪話」など5つの項目に分けるなど平易な文章で説明。
※週刊ポスト2012年8月17・24日号