日本では毎年、数万ものあらゆる店舗が開業している。それと同時に、同じくらいの店舗が廃業に追い込まれている。おおまかにいえば、その差は1つ。リピーターを作れるかどうかに懸っているのだ。
帝国ホテルの客室、レストランなどで35万人を接客し、このたび『帝国ホテルで学んだ無限リピート接客術』(光文社)を上梓した接客コンサルタントの福本衣李子さん(52)に、店舗運営にかかわる人にとって役立つという“無限リピート接客術”とは何かを聞いた。
「私は、目の前にいる1人のお客様の心をつかむことに注力してきました。1人のかたにリピーターになって頂ければ、そのお客様がお客様を呼ぶという状態になります。それが“無限リピート”です。そのためには、お客様を“読む”力が大切になってきます。
たとえば、飲食業の場合、声に出された注文だけがお客様のご要望ではありません。スタッフが忙しそうに動いていたら、声をかけづらくなり、黙ってしまうこともあるでしょう。常に、微妙な素振りや表情の変化を感じ取れるように、客席に気を配るのです。理想は『声を掛けられる前に、お客様の要望を察知して、応える』ことですね」
慣れないうちは、気を配れば配るほど、目つきが悪くなるのだという。
「手元の作業をしているときでも、後ろや横の様子を注視していないといけない。すると、どうしても険しい顔になるんですね。その結果、目つきが悪くなってしまいがちです。でも、慣れてくれば、そんなことはなくなります」
帝国ホテルというブランドがあるから、客がつくのではという意地悪な見方もあるそうだが、福本さんはキッパリと答えた。
「お店が繁栄しているから、リピーターがつくのではありません。『リピーターがいるから、繁栄している』んですね。そう意識していかないと、どんな繁栄店でも衰退していくものです」