草食男子、セックスレスなんて関係ない。いま熟年世代の恋愛と性が注目されている。そこには「老いらくの恋」などとは呼ばせない、人生最後の恋に賭ける高齢者の熱い姿がある。熟年世代の恋愛と性について長く取材活動を続けている作家の小林照幸氏に「熟年の恋愛・性について、現状とこれから」を聞いた。(聞き手=ノンフィクション・ライター神田憲行)
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--小林さんは著書「熟年性革命報告」(2000年、文春新書)から最新刊の「アンチエイジングSEXその傾向と対策」(2011年、同)まで、12年の長きに渡り熟年世代、高齢者の恋愛と性について取材、4冊の著書を執筆されています。取材当初から今までのうちで大きな変化はなんでしょうか。
小林 携帯電話やパソコンの普及により、「出会い」の形が多様化してきたことですね。私が取材した当初は老人ホームに携帯を持っての入所は考えられなかったし、パソコンなんて誰も使えなかった。ところが今は高級老人ホームになると、居室ごとにLAN端子があるなんて当たり前です。パソコンの使用が老人ホームの入所者のADL(日常生活動作)の向上につながる、という見方も当たり前になりました。
「出会い」の形にしても、以前はホームの入居者同士だったのが、今は統計を取ると「出会い系サイトで」という人がかなり多い。異性を求める姿勢が非常に積極的なんですよ。またコンタクトにしても、家族目を気にしながら家電話を使う必要もなく、携帯でダイレクトに取れるから、関係が進展するのも早い。
--小林さんの4冊の著書を拝読すると、「お年寄り=枯れた」というイメージががらりと変わる。彼と彼女らの「原動力」はなんでしょうか。
小林 70代以上の方たちの「パートナー」といえば夫婦しかなかった。それも親の勧めや職場でお見合いを勧められて、みたいなパターンで結婚している人が多い。お互いの価値観・趣味が共通したからという出会い方は我々からすれば普通なんですが、逆にこの世代には新鮮なので盛り上がるんです。
セックスにしても、若い頃のようにいつでも何回でもというわけにはいかない。その都度の1回1回が「人生で最後かも」という想いがあるから、尊くて情緒深くなるんです。
--不倫など婚外者とのセックスも多い。前出の「アンチエイジングSEX」での小林さんのアンケートによると、「旦那様が海外出張中にチャットで知り合った6歳年下の彼と三日間体を重ねました」(67歳女性)とか「同級生と。同じ病院に通院、帰りにホテル」(75歳男性)など、驚くばかりです。
小林 地域ボランティアの会合で知り合った、という例もありました。「不倫とか自分には関係がない」と思い込んでいる人ほど、ある日突然の出会いに燃え上がっちゃう。アンチエイジングという考え方が2003年ぐらいから広まってきて、「恋愛とセックスを楽しんでいれば、いつまでも若くいられる」という思考になってきているんですよ。実際、私が会って取材した人は皆さん、実年齢よりも若く見えますからね。
高齢者福祉の世界では「QOL」ということが盛んに言われています。「Quality Of Life」の略で、ただ生きているだけでなく、老後生活の充実を目指す言葉です。私はこの「Life」が今や「Love」じゃないかと考えているんです。高齢化社会の恋愛をいま考える時期なんです。