オリンピックムード一色だったスポーツ界ですが、ニッポンの夏のスポーツを忘れちゃいませんか? そう、高校野球です! ふだん野球に興味がない女性も「○○王子」など名物さわやか球児が生まれる高校野球は好きという人も多いはず。
漫画でも高校野球は一大人気ジャンルとして定着していて、さわやか球児もよりどりみどり。ただ「さわやかなだけの男子じゃ物足りないのよね」という酸いも甘いも経験してきた大人の女性もいらっしゃることでしょう。
大丈夫です。最近の高校野球漫画には、さわやかなだけじゃない男子がいるんです。
『砂の栄冠』(三田紀房)のテーマはずばり、カネ。突然1000万円を託された球児が、甲子園へ行くために「黒い主将」になることを誓います。
300万円で伝説のノックマンを雇い、高額の整体にかかり、さらに計算された「カワイイ高校球児」を演じて観客を味方につけたりと、超えげつない! でも「汚れてもなんでも」甲子園に行くという熱い気持ちは本物なんです!
ちょっとひねったさわやか球児ものでおすすめなのは『高校球児ザワさん』(小学館)。
ザワさんは高校の野球部に所属するただ一人の女子選手。一瞬頭をよぎる「男子に囲まれてムフフ」な逆ハーレムのような展開も、部員との恋愛も描かれません。
甲子園など公式戦には当然出場できないのですが、女子選手の権利を主張し野球界を改革する!というような劇的な展開も、なし。
男子部員と同じユニフォームを着て、同じプロテインを飲み、共に走り込みをこなす姿を、カメラが(かなりフェティッシュに)映していくのみ。
無心のザワさんがかっこよくて、かわいくて、ずっと見ていたくなる作品です。ただ、ザワさん以外の男子部員どもはさわやかどころかムサイ&煩悩まみれ。
そういえば、『おれはキャプテン』(講談社刊)の主人公も黒かった! 計算高い頭脳派で、チームの独裁者です(「ふてくされ王子」の異名まで!)。
高校野球マンガに空前の「さわやかじゃないブーム」到来の模様。
今年の夏は、「この子も本当は黒いのかしら」などと妄想しつつ、甲子園中継を楽しんでみては?(文/門倉紫麻)
※女性セブン2012年8月23・30日号