熟年世代の恋愛と性について長く取材活動を続けている作家の小林照幸氏に聞く、熟年の恋愛・性の現状とこれから。今回は高齢者専門の風俗について。(聞き手=ノンフィクション・ライター神田憲行)
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小林さんの著書「アンチエイジングSEX その傾向と対策」(文春新書)でのアンケートによると、60歳以上の男性500人のうち、「今でもSEXをしている」と現役回答をした人が50%にものぼる。うち70~74歳の男性で「月1、2回はする」と答えた人が24人もいた。「草食男子」の若者と比較すると驚異的な性欲である。
しかしパートナーがいないお年寄りはその性欲をどこで紛らわせるのか。小林さんから紹介された高齢者向け風俗店を取材した。
店名は「ナイスミドル」という。高田馬場の何の変哲もないマンションの二室を借り、ひと部屋が受け付け、もうひと部屋がプレイルームだ。「40歳以下のお客様はお断り」といい、60分1万8000円でヘルスサービスを施す。
関西出身のオーナー兼店長氏の話。
「オープンして12年になります。普通の風俗だと競争相手が多いから、高齢者向けに絞れば間口(顧客層)は狭い代わりに、奥行きが深いと判断したんですわ。派手な看板の店に入ったり、名前を書かされるのはお年寄りに抵抗感が強いから、店の看板も掲げないし、会員登録みたいなこともしない。風俗誌の広告も以前はしていましたが、いまはしていません。口コミだけで12年やってこれました」
現在働いている女性は8人。2人に話を聞いた。
◎ゆいさん、30歳前後、色白ぽっちゃりタイプ。私のために冷たい麦茶を用意してくれるなど気配りがあって優しい。
「風俗はこの店が初めてです。他のお店の面接も受けたんですが、若い人も来る店だと知り合いに会う可能性があるんで(笑)常連さんの最高齢は80歳で、2ヶ月に1度くらいの頻度でいらっしゃいます。話とかなくて、部屋に入るとすぐ服を脱いでシャワーとベッド(笑)でもさすがに射精はないんですよね。ただ若い女の子と裸で抱き合っていたいみたいです。70代の常連さんは2時間とか長いコースで、持ち込まれたお酒を一緒にいただきながら、趣味の旅行の話を聞いたりしています。老人仲間の愚痴もあります。たぶん家族や他の友達にも言えないので、たまったのを私に言いに来るんでしょうね。頷いているだけですけれど(笑)この方は時間はかかりますが、ちゃんと最後までいかれます」
◎あいさん、40歳前後、細身で声が可愛い。前職は性感マッサージ関係の仕事をしていた。
「そのお店が潰れるときに、常連さんからこの店の連絡先を聞いて、転職しました。もともとお年寄りと話をするのは好きだから、抵抗感はないですね。60代半ば常連さんは、シャワーよりバスタブにお湯をはって一緒に入るのが好き。あっちの方はもうダメみたいなんですけれど、『真ん中は元気ないけど、お指ちゃんは元気だよ』って、いろいろ触って来られます(笑)」
「戦争中の大変な時期でも赤線地域はさびれませんでした。この商売はどんな時代になっても、いくつになってもなくなりませんわ」と店長氏はいう。
--いくつになっても女性の肌を求めるというのは、男性の性というか、考えさせられます(笑)
小林 これからの風俗産業は、お金と時間はある高齢者が大きな顧客となっていくんじゃないですかね。現状では旅行産業がすでにそうなっています。バブル時代に立てられて客足が遠のいた温泉宿を高齢者向けに改装して、バスツアーなどが組まれている。社交ダンス場は完備されていて、夜はダンスパーティーで盛り上がっています。