日々番組作りに追われるテレビマンにとって、無視できない組織がBPO(放送倫理・番組向上機構)だ。放送倫理を高め、番組の質を向上させるために、NHKや民放各局の出資によって2003年に作られた第三者機関だが、一方で「過剰な制約を押し付ける監視装置」という声も聞こえてくる。現場はどう考えているのか。3人の現役テレビマン(お台場A氏・汐留B氏・六本木C氏)が、匿名を条件に本音を語った。
――最近のBPOの審議入りした案件は、日テレとフジが多く、逆にテレ朝はほとんどないが。
六本木C:「ウチには厳しい『プレビュー会』がありますから。放送前に上層部から現場のスタッフまでが集まり、番組ごとに厳格なチェックを行なう。チェック項目は、過剰演出はないか、クレーマーに突っ込まれそうな過激な発言や事実誤認などがないかなど。それをワンカットずつ止めて資料を見ながら確認するんです。1時間番組なら、6時間ぐらいかけて見ることになります」
汐留B:テレ朝ほどBPO対策が万全な局もない。しかも、その方針を逆手に取って人気番組まで生まれた。『お願い!ランキング』や『シルシルミシル』の企業特集は、人気商品ができるまでの過程を面白く紹介することで、高視聴率を叩き出しているけど、まさに抑制と圧力があったからこそ誕生した企画でしょう」
六本木C:「そうですね。視聴者に身近な商品を取り上げるから実用的。運営面も、企業とのコラボ企画だから低予算で済む。おバカな罰ゲームもないから苦情も来ない」
お台場A:「数字も出ているから(※)、フジも日テレも同じような番組を作ってテレ朝の成功を真似ている」
――それによってどこも同じような番組が並ぶ事態になり、“テレビ離れ”を起こしているのではないか。
汐留B:「その指摘はもっとも。本当は我々も、バラエティならもっと過激なものを作りたいという気持ちがある。1970年代に子供の教育上よろしくないと、PTAから文句をいわれた『8時だョ!全員集合』のようなある種の笑いを極めたいし、その昔一世を風靡した『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』のようにド派手な爆破シーンで、あっと驚く笑いもとりたい。古き良き時代にあった無茶苦茶なことをしたいのが本音です」
※今年4月からの3か月の四半期視聴率で、テレ朝は開局以来初の『4冠(全日、ゴールデン、プライム、プライム2)』を達成した。バラエティ番組の好調が要因といわれている。
※週刊ポスト2012年8月17・24日号