事件があるたびにネット上に登場し、掲示板へ書き込みを続け、何でもかんでも「韓国の陰謀」に結びつけて騒ぐネット右翼(ネトウヨ)。最近ではデモや不買運動などリアル社会での活動も注目されている。『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)の著者、中川淳一郎氏とウェブ社会をつぶさに見てきた人気ブロガー、山本一郎氏が、ネトウヨについて語り合った。
山本:ネトウヨの一部は、現実社会でデモや抗議行動を積極的に行なっているけれど、さらに進化して「右翼活動家」になる人は数えるほどしかいない。
中川:ネトウヨは保守思想や皇室に対しても、ほとんど関心がありませんね。佳子様、眞子様に萌えるとかその程度で、腹が据わってない右翼活動なんです。
山本:面白いのは、ネトウヨの人たちがデモに参加し始めると、てきめんにネット依存率が下がっていくこと。定点取材では、1日8時間以上ネットに接触していた人が、デモに参加した後から6時間以下、5時間以下に減るというケースが多い。余った時間は何をしているんですかと聞くと、「ハローワークに行くようになりました」とか「アルバイトを始めました」とか、社会化しているんですよね。デモに参加して、ウェブ以外で人との触れ合いを持つことがものすごく影響するようです。
中川:ああ、なるほど。そういえばフジテレビデモの主催者の一人も、デモで知り合った女性と付き合い始めて、もうデモ活動はやめるとか宣言していました。その社会化した時点で、ネトウヨ活動には意味がなかったという結論になったりするんですか。
山本:そのようです。彼らには彼らなりの正義があり、日本人はかくあるべきとの強い感情も持っていて、すべて否定すべきでないと思うんです。彼ら自身の社会的立場が弱く、これからの人生も非常に微妙だということも含めて言うと、可哀想である反面、社会化させたうえで、彼らの持つ正義感をポジティブに活かす方法があるんじゃないかと思いますね。
※SAPIO2012年8月22・29日号