国内

ワタミ会長 いじめ発覚なら担任教師の給料下げるべきと提案

 大津いじめ自殺事件で見えた教育システムの荒廃は、学校だけでなく、この国全体を蝕むものだ。今こそ硬直化した戦後60年の教育システムを変えなくてはならない、と指摘するのは神奈川県の教育委員を9年務め、郁文館夢学園の理事長でもあるワタミ会長の渡邉美樹氏である。

 * * *
 この問題を解決するには、教師には成果主義、学校には競争原理を持ち込むしかない。

 極端に言えば、例えばいじめが起きたクラスの担任教師は給与を下げる。いじめにいたるまでには芽の段階があるのだから、事前に芽を摘み取っておくべきで、それができなかったのは教師の能力が足りなかったか、やる気が足りなかったかだ。

 だから教師の評価をきっちり行なう。私が理事長を務める郁文館夢学園では教師の「360度評価」というものを実践している。生徒や親からの詳細なアンケートの結果、さらには校務分掌・教科・学年毎に上司、部下からの申告という具合に、総合的に評価する。評価がよければ、当然給与は増える。

 子供に教師を評価させるというと、「教師が子供に迎合するようになる」と必ず言われるが、そんなことはない。

 郁文館中学・高校では校長、教頭が毎日、教室を巡回して教師の授業をチェックするが、教師の上司である彼らの評価は、生徒たちのアンケート結果とほぼ一致する。子供は意外とよく見ているものなのだ。

 教師を評価し、給与に反映させるなら、相応のトレーニングが必要だ。

 今の仕組みでは大学を出たばかりの22歳の若者がいきなり「先生」と呼ばれる立場になり、教室の中では“王様”として振る舞うことができる。批判する人がいないから、成長しなくなる。それを改善するには、インターン期間を設けたり、研修を行なったりすることで、教師としての資質を見極めながら、同時にスキルアップもできる仕組みが必要だ。

 学校も同じである。教育方針、私立であれば経営実態のディスクロージャー(公表)を進め、公立と私立の間で自由競争を起こすためのバウチャー制度を導入するなどし、生徒や親が学校を本当に自由に選べるようになれば、良い学校は生徒が集まり、そうでないところは淘汰される。それが学校に対する評価である。

 なぜ学校を競わせたほうがいいかというと、裏には親の愛があるからだ。親は本当に子供のためを思うなら、「この子の能力を引き出してくれる学校はどこか」を考え、必死で探すはずだ。特に中学校を選ぶのは親なので、学校は親に選ばれるように競えばいい。

 親が良い学校かどうかを判断するために、学校は教師の評価を公表する。もちろん親の側にも偏差値重視の価値観を正してもらう必要はあるが、親も子供が本当にかわいいなら、優しくてゆるいだけの学校より、厳しく育ててくれる学校に入れるはずだ。

※SAPIO2012年8月22・29日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

米倉涼子の“バタバタ”が年を越しそうだ
《米倉涼子の自宅マンションにメディア集結の“真相”》恋人ダンサーの教室には「取材お断り」の張り紙が…捜査関係者は「年が明けてもバタバタ」との見立て
NEWSポストセブン
地雷系メイクの小原容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「家もなく待機所で寝泊まり」「かけ持ちで朝から晩まで…」赤ちゃんの遺体を冷蔵庫に遺棄、“地雷系メイクの嬢”だった小原麗容疑者の素顔
NEWSポストセブン
渡邊渚さん
(撮影/松田忠雄)
「スカートが短いから痴漢してOKなんておかしい」 渡邊渚さんが「加害者が守られがちな痴漢事件」について思うこと
NEWSポストセブン
平沼翔太外野手、森咲智美(時事通信フォト/Instagramより)
《プロ野球選手の夫が突然在阪球団に移籍》沈黙する妻で元グラドル・森咲智美の意外な反応「そんなに急に…」
NEWSポストセブン
死体遺棄・損壊の容疑がかかっている小原麗容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「人形かと思ったら赤ちゃんだった」地雷系メイクの“嬢” 小原麗容疑者が乳児遺体を切断し冷凍庫へ…6か月以上も犯行がバレなかったわけ 《錦糸町・乳児遺棄事件》
NEWSポストセブン
11月27日、映画『ペリリュー 楽園のゲルニカ』を鑑賞した愛子さま(時事通信フォト)
愛子さま「公務で使った年季が入ったバッグ」は雅子さまの“おさがり”か これまでも母娘でアクセサリーや小物を共有
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)は被害者夫の高羽悟さんに思いを寄せていたとみられる(左:共同通信)
【名古屋主婦殺害】被害者の夫は「安福容疑者の親友」に想いを寄せていた…親友が語った胸中「どうしてこんなことになったのって」
NEWSポストセブン
高市早苗・首相はどんな“野望”を抱き、何をやろうとしているのか(時事通信フォト)
《高市首相は2026年に何をやるつもりなのか?》「スパイ防止法」「国旗毀損罪」「日本版CIA創設法案」…予想されるタカ派法案の提出、狙うは保守勢力による政権基盤強化か
週刊ポスト
62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《累計閲覧数は12億回超え》国民の注目の的となっている宮内庁インスタグラム 「いいね」ランキング上位には天皇ご一家の「タケノコ掘り」「海水浴」 
女性セブン
米女優のミラーナ・ヴァイントルーブ(38)
《倫理性を問う声》「額が高いほど色気が増します」LA大規模山火事への50万ドル寄付を集めた米・女優(38)、“セクシー写真”と引き換えに…手法に賛否集まる
NEWSポストセブン
ネックレスを着けた大谷がハワイの不動産関係者の投稿に(共同通信)
《ハワイでネックレスを合わせて》大谷翔平の“垢抜け”は「真美子さんとの出会い」以降に…オフシーズンに目撃された「さりげないオシャレ」
NEWSポストセブン
中居正広氏の近況は(時事通信フォト)
《再スタート準備》中居正広氏が進める「違約金返済」、今も売却せず所有し続ける「亡き父にプレゼントしたマンション」…長兄は直撃に言葉少な
NEWSポストセブン