2010年度、公立学校において懲戒処分(免職、停職、減給、戒告)を受けた教師は905人。不祥事を起こして「訓告」を受けた教職員は3397人。「諭旨免職」となった2人を加えると合計は4304人となる。“ヤンキー先生”として知られる義家弘介・参議院議員によると、「全国の教員は約100万人ですから、懲戒処分を受けているのはおよそ1000人に1人(0.1%)ということになりますが、氷山の一角と見たほうがいい」という。
だが、その「氷山の一角」でさえ、“懲戒教師”たちの行動は目を覆いたくなる。2010年度の懲戒処分905件の中で、「交通事故(349件)」に次いで多いのが「わいせつ行為等(152件)」だ。
前述の文科省資料によると、この152件のうち、被害者が「自校の生徒・児童」「自校の卒業生」というケースが76件と半数を占める。「他校の18歳未満」が35件、「自校の教職員」が12件、「他校の教職員」と「教育実習生」が1件ずつ、残りは「その他」となっている。教師の“魔の手”が子供たちに迫っていることを示す数字だが、その詳細は明らかにされていない。
そこで本誌取材班は、不祥事の具体的な内容を追った。
三大都市圏の6都府県(東京・埼玉・千葉・神奈川・愛知・大阪)に加え、いじめの起きた滋賀県、さらに、教員の人事権を持つ全国20の政令指定都市を対象に、2011年4月以降に行なわれた教員に対する懲戒処分の詳細を取材・調査。多くの自治体から「学校職員に対する懲戒処分について」などと題する文書を入手した。
その結果、計358件の懲戒処分の詳細な内容が判明した(京都市では2011年4月以降、懲戒処分はなかった)。
ここでも目立つのは、わいせつ事案である。東京都が出した「教職員の服務事故について」という文書には、東京都多摩地域の男性主任教諭(50歳)の「処分理由」としてこう書かれている。
〈顧問を務める勤務校の卓球部の女子生徒に対して、同生徒にマッサージを行うことについて口外しないように指示した上で、(中略)自動車の中において、手のひらで同生徒の左右の太ももの内側をマッサージする、手のひらで同生徒の左右の足の付け根付近を着衣の上からマッサージするなどの行為を約38回行い、同生徒に不快感を与えた〉
この教諭は免職処分となっている。他にも、
〈自宅において以前勤務していた中学校の卒業生である高等学校女子生徒と性行為を行った〉(東京都江東区の中学校教諭、免職)
といった、教え子に手を出す事例は少なくない。
さらに悪質なケースもあった。川崎市の小学校に勤める33歳の教諭が、八王子市内の路上で小学6年生の女児を車に押し込み、ナイフで脅迫し、免職になったというものだ。この事件は一部で報じられたが、川崎市の文書によれば〈両手首及び両足に粘着テープを貼り付け〉るなど、計画性の高さもうかがわれた。
男子も被害に遭うことがある。神戸市立高校では、40代女性教諭が、男子生徒にキスしたり、携帯メールで「チューしたい」などと送って、やはり免職となっている。
※SAPIO2012年8月22・29日号