もはや低価格だけでは売れない時代なのか――。この夏、大手ハンバーガーチェーンはこぞって1個300円以上の新開発バーガーを「期間限定」で販売している。
マクドナルドは世界各国の店舗で販売しているメニューをもとに開発したバーガーを順次発売。いまは第2弾となるインドの「ホット(マイルド)ゴールドマサラ」(390~410円)を8月下旬まで売り出している。チキンやレタスにスパイシーなカレーソースを加えた“ご当地メニュー”で評判も上々だ。
夏野菜を使った「モス野菜バーガー」(320円)で短期勝負を挑むモスバーガーも、次なる限定商品として日本各地のご当地バーガーを340円~360円で用意。釧路発祥のスパカツ、大阪で食べられている豚の天ぷらを使ったバーガーほか全4種類を8月21日から10月上旬まで発売する予定である。
さらに、ロッテリアでは8月16日から、テレビでもお馴染みの川越達也シェフのプロデュースによる第2弾商品として「川越シェフトリュフ仕立て 絶品チーズバーガー」(390円)を期間限定で投入する。
いずれも「限定でしか食べられないから、きっとおトクに違いない」という消費者心理をつき、高価格のバーガーで客単価を上げるうまい戦略といえるが、店側にとっては苦肉の策との指摘もある。
バーガー研究家でイエローズ代表取締役(飲食店コンサルティング)の白根智彦氏が分析する。
「これまで安売り競争をやり過ぎたために、客はおいしくなければキャンペーンで安売りしているファストフード店を渡り歩くという消費行動になってしまいました。だから、期間限定のバーガーは4割ほどと高い原価で食材を仕入れ、付加価値をつけることで客数を増やす戦略。その代わり、ポテトやドリンクなど原価率10%程度のサイドメニューを一緒に注文してもらうことで全体の儲けを調整しているのです」
そこまでして利益が少ないのなら、わざわざ期間限定メニューを提供するメリットはどこにあるのだろうか。
「常に新しい商品を仕掛けていればマスコミに取り上げられて一定の客数が見込めます。特にご当地バーガーなどと銘打てば、話題性も十分ですしね。でも、いまや300円も出せば牛丼やコンビニ弁当などが食べられる時代。期間限定商法はハンバーガーチェーンのみならず、いろんな業界を巻き込んで消耗戦を続けているだけともいえます」(白根氏)
そして、そんな終わりなき戦いにも限界は来ると白根氏は見ている。
「この食材をハンバーガーに入れると本当においしくなるという味の追求ではなく、単にご当地メニューに仕上げれば注目度が高まるという順序が逆の開発手法をしているに過ぎません。そんな話題性ありきでご当地文化を使い捨てていっているだけのマーケティングを続ければ、結局は販売期間の終了と同時に客にも飽きられていく――という悪循環の繰り返しです」
そういえば、マックには季節によって販売される「チキンタツタ」や「月見バーガー」、「グラコロ」といった“定番”の期間限定バーガーもある。リピーターの多い商品だけに、「いっそのこと通常メニューに加えたほうが安定した利益が見込めるのでは」(業界関係者)との声は根強い。