韓流ドラマの原点として、いまも絶大な人気を誇る『冬のソナタ』。その生みの親、ユン・ソクホ監督の新作ドラマ『ラブレイン』(チャン・グンソク主演、フジテレビ系)は、日本での放送開始とともに韓流ファンを虜にしている。
ユン監督は現在55才。1985年、韓国のテレビ局・KBS入社と同時にドラマを手がけるようになった。
アジア全域でヒットした2000年『秋の童話』や2002年『冬ソナ』を生み出し、まさに海外の韓流ブームの生みの親である。
しかし『冬ソナ』後に独立したユン監督がこの10年間で制作したドラマは、2006年の『春のワルツ』だけだった。ファンの間では、ユン監督が私生活で2009年に結婚したことが影響しているのでは、と気を揉む声もあった。
「結婚をしてみて、結婚はドラマとは違う、リアリティーの世界だと学びました(苦笑)。が、ドラマをつくらなかったのは、結婚のせいではないですよ」(ユン監督)
実はこの6年間、ユン監督を悩ませたのは、自分が生んだ韓流ブームの拡大だった。
「ドラマをつくるのにこれだけ時間がかかったのは、時代の流行と私のやりたいことの折り合いがつかなかったからなんです」(ユン監督)
『冬ソナ』は、2003年にNHK-BSでヒットしたのを皮切りに、翌2004年、NHK総合で放送されると、最高視聴率20.6%を獲得した。ヨンジュンの来日時には多くの中高年ファンが空港に殺到し、社会現象にまでなった。
その後、“韓流”は日本に雪崩を打ってはいってくる。恋愛メロドラマにとどまらず、時代劇、アクション、ラブコメに至るまで?韓国のメディア事情に詳しい大阪市立大学大学院の朴一教授が解説する。
「『冬ソナ』によって韓国ドラマが儲けられるコンテンツと認められ、国の政策としてドラマが輸出産業のひとつになりました。韓国ではそれまでドラマは『映画より格下』とされていたのが、急に評価が高まり、多くの作品が制作されるようになりました。その中には、日本でのビジネスだけを考えた作品も少なくありません」
韓流ドラマが大量につくられることで何が起きたか。視聴者はより刺激の強いシーンやより真新しいテーマを求めるようになり、ユン監督の得意とする、昔ながらの純愛ドラマは地味なジャンルへと追いやられた。ユン監督は2006年の『春のワルツ』で、韓国国内では視聴率で惨敗を喫する。
視聴環境の変化も逆風となった。
「昔は視聴者がドラマをテレビの前でじっくり見てくれたのが、韓国ではいま、録画やネットでのダウンロードで見るようになりました。通勤途中にスマホで見る人もいて、刺激のないシーンは早送りされてしまいます。インパクトのあるもの以外は伝わりにくくなり、腰を落ち着けてじっくりドラマを見る習慣がなくなっています」(ユン監督)
※女性セブン2012年8月23・30日号