この夏、コンビニで一番ホットなスペースはどこか。レジ横にあるホットスナックのコーナーである。だが夏だからという理由でもなければ、「ホットスナック」だからでもない。からあげを巡って、アツいバトルが各コンビニ間で行われている。各コンビニがからあげ名店の監修をうけ、新作を続々と送り込んでいるのだ。食と料理に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。
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先鞭をつけたのは、ローソンだ。2011年6月に同社の看板ホットスナック「からあげクン」で、日本唐揚協会の監修により大分県・宇佐市の「宇佐しょうゆダレ味」を発売。同年に「名古屋手羽先ダレ味」、「中津しおダレ味」と立て続けに、名物からあげの味わいをホットコーナーに持ち込んだ。
2012年もローソンの攻勢は続く。同じく「からあげクン」で5月に「北海道ザンギ(醤油味)」を発売した後、「からあげグランプリシリーズ」として、日本唐揚協会の「からあげグランプリ」金賞受賞店監修の味が7月から続々登場。「名古屋鳥開監修・甘辛胡麻味」「埼玉インどり屋監修・醤油せんべい味」「埼玉光苑監修・海鮮塩ダレ味」などを次々と投入した。さらにレギュラーラインの「からあげクン」のほか、5月に1個45円の単品売り、「鶏から」を発売。他にも「Lチキ」なども含め、ローソンのレジ周りにおけるホットスナックの存在感は尋常ではない。
まさにローソンの独壇場になるかと思われた今年、追走者が現れた。「ファミチキ」など、ホットスナックに力を入れていたファミリーマートが、大分・中津に本店を置く名店「もり山」の監修による「からあげ」を5月末に発売したのだ。これには本当に驚いた。複数のコンビニチェーンが「××監修」のホットスナックを商品化するなど前代未聞である。
実はここまで紹介した商品は、すべて監修元の店舗で口にしたことがある。いずれも驚くほどよくできている。もちろんまったく同じではないが、本店の味を想起させる味わいとなっているのだ。
そしてこのからあげチキンレースに、7月から参戦したのが「デイリーヤマザキ」。大分県・中津から「げんきや」「鳥しん」「からあげ屋チキンハウス」など、「聖地 中津からあげの会」に加盟する、からあげ専門店数店が参加している。しかも監修したからあげをホットスナックに送り込むだけでなく、「おむすびからあげ」や「からあげ弁当」など惣菜への展開も見せている。
マルハニチロホールディングスが7月5日~7月9日の5日間で行った『コンビニエンスストア利用実態調査』で「つい衝動的に買ったり、利用したりすることが多いもの」で堂々の30.7%を獲得し、第3位に食い込んだホットスナック。ローソンに至っては、Web上で「からあげ文化研究所」まで立ち上げ、日本だけでなく中国の文献まで漁っては、からあげの歴史をひもとき、中国の「鶏のからあげの原型」レシピまで再現している。
今後、このチキンレースは他のコンビニチェーンを巻き込むなど、さらにアツく展開するのか、はたまたまったく違う展開を見せるのか……。そろそろコンビニにも、おでんや肉まん・あんまんなど、他の「ホット」も参入してくる。アツい季節は終わらない。