ロンドン五輪の“お騒がせ女王”として歴史に名を刻んだのは、韓国のフェンシング女子選手、シン・アラムだろう。準決勝での誤審に抗議して1時間にわたる座り込みを行なう姿は「韓国人はそこまでやるのか」と世界中を唖然とさせた。
国際フェンシング連盟が判定に問題があったことを認め、「特別メダル」を授与すると発表したが、シンは受け取りを拒否。大韓体育会は「共同銀メダル」をシンに授与することをIOCに要求したが、そんなワガママが通用するはずもなかった。
その後、シンは団体で銀メダルを獲得し、なんとか面目を保った。悲劇のヒロインが逆境を乗り越えて銀メダルに輝いたということで、世界からは眉をひそめられた彼女も、韓国国内では英雄となった。
団体決勝戦翌日の8月5日には、シンの出身地・鶏龍市の市長が彼女の実家を訪問し両親に花束を贈呈。「4万3000人の市民を代表してお祝いします」と述べ、大々的な歓迎パレードを行なうことを約束した。
「すでに国内の大企業数社がCM出演のオファーを検討しているといわれています。フィギュアスケートのキム・ヨナ以来の女子スターの誕生に国内は沸いています」(韓国メディア記者)
涙の後にメダルも取れて名声も高まったのだから本人も気が晴れただろう―と思いきや、そうでもないらしい。8月6日、韓国テレビ局の取材を受けたシンは、「(誤審時の対戦相手であるドイツの)ハイデマン選手は憎くはないか」という問いに対し、「ハイデマン選手はただ勝利するために最善を尽くしたので、彼女に悪い感情はない。ただし審判のバーバラ・ツァーは憎い」と、オーストリア人の女性審判にいまだ敵意をむき出しにしていた。
※週刊ポスト2012年8月31日号