「世界一の歯車へ」を標榜するUst番組「ザ・サラリーマン」。その構成を務めるDJサエキング氏には、全国から「サラリーマン道」を極めようと思う者達から様々な相談が届く。
今回の相談者は、中堅広告会社に勤める営業のUさん(男性・35歳)から。
【Uさんからの質問】
私は仕事柄地方への出張が多く、新幹線をよく利用します。帰りの新幹線だけが、唯一緊張からとき離れてリラックスできる時間帯なのですが、過去に2度も、隣の席の客が、見覚えがあるものの「クライアントか発注先の人間か分からない」事態に襲われ、分からないまま降車駅を迎えることになりました。
2度とあんな苦痛を味わないために、こんな時でも相手を思い出すうまい方法はないものでしょうか?
【サエキング氏の回答】
名前は仕方がないとしても顔ぐらいキチンと覚えておきましょう。しかし、よくあることとしてサラリーマンとしては想定すべき事柄ですね。まず、新幹線の座席のリクライニング角度を深くしてしまうと、通行者には上目遣いに映り、良い印象を与えません。
客商売をしているならば、印象も商材です。いつクライアントと出くわしてもスクランブル挨拶ができる角度に設定しておきましょう。テーブル周りの散らかし具合、読む週刊誌の銘柄、靴の脱ぎ具合、しかりです。
ちなみに航空自衛隊は、アラートを受けて5分でスクランブル発進ができるよう訓練されています。
さて、話を本題に戻しますね。実は、私も同じような経験があるので参考になれば。私は、仕事帰りで、博多から新大阪に向かう新幹線の中でした。博多を出発し、車内が落ち着き始めたその時です。
前の席で、ここは俺の席だどうだの軽いイザコザが。私は、自分の時間が犯されたこともあって少し不機嫌な顔でそのサラリーマンを凝視。すると、そのサラリーマンが「あ、サエキングさ~ん!、あれ、俺の席ここだ」と言って私の横に座ることになりました。
私は、うっすら顔を覚えている程度で、名前はもちろんの事、クライアントか発注先かも判断つきません。しかし相手(Aさん)は、私のそんな気持ちを察するどころか、私が自分のことを思い出せていないなんて夢にも思っておらず、すごいハイテンションで話しかけてきます。
文字ニュースは、まもなく小倉駅到着のサイン。これから大阪までの2時間30分をどうやって切り抜ければいいのか、新幹線同士のすれ違い時に聞こえてくる、特有のゴーという波動音は私の心境を表すBGMとしては十分なものでした。
一番早い解決策は、無理やりこじつけて名刺交換をすることですが、よく知った間柄感を出している相手に簡単にはできません。そこで、思いついたのがFacebookです。
「最近はじめたのですが、使い方が良く分からなくて」と前置きしつつスマホを差し出し、私宛に友達承認を申請してもらう作戦に出ました。
私は、盛り返しに胸を躍らせていましたが、そこは某キャリアのスマートフォンの上にトンネルばかりの山陽新幹線です。ほとんどつながらず、相手があきらめてしまいました。
相手の会話もプライベートのことばかりで、全く解決の糸口すら見当たらず、まずは名前を探ろうと「会社では何て言われているんですか?」と質問をぶつけました。我ながらいい質問です。最悪でも、氏名どちらかの頭文字は探れます。
すると、A氏は
「デストラーデ!」と言うではありませんか!
「。。。。。」
ちなみに、デストラーデとは元西武ライオンズの助っ人外国人選手です。それからは、もう、なるしかないと腹をくくり聞き役に徹することにしました。そして、デストラーデにスキがでる機会を辛抱強くうかがいました。もう、女子柔道のアサシンこと、松本薫の心境です。
それから1時間経とうとした時だった。「ホントに、うちらイベント業界も…」との発言を私は聞き逃しませんでした。そうか、発注先か! これまでのバカ丁寧な対応を悔やみつつ私は安堵とともにリクライニングシートの角度をフルに倒し、プレミアムモルツと普段は買わないアーモンドを遠慮なく注文しました。
しかし、態度が急変した私を見て、今から飲み始めるのかと思ったのか「サエキングさん、もう降りますよ」との発言。テロップを見ると、新大阪の文字。次回、同じようなことがあったら「自由席に移ろう」と心に固く誓った私でした。