『美木良介のロングブレスダイエット』(徳間書店)はシリーズ累計160万部を超える大ヒットになっている。もともとスポーツマンの美木良介(54才)は、ジムなどで日々ハードなトレーニングを重ねていた。
「芸能界でいちばんキレイな体をつくろう、そう思ってトレーニングを続けていました。ウエイトトレーニングにも20代から真剣に取り組んでいて、トレーナーの上をいく知識を備えていたと思いますよ」(美木・以下同)
ところが30才のとき、140kgのベンチプレスを挙げた直後に、腰に痛みが走った。それを我慢しながら時代劇で鎧を着て芝居を続けたため、痛みはますます悪化した。
「腰痛をなめていたんですね。トレーニングをしているから、こんな腰痛すぐに治るだろうと。実際、筋肉もついていたので、ある程度の痛みには耐えられるんですよ」
だが無理して仕事を続けるうち、腰痛はひどくなるばかり。痛みが訪れる周期は3 か月に1回が1か月に1回としだいに短くなり、痛み自体も激しさを増していった。車の運転も難しくなり、ときには肩にまでその痛みが達した。
そして2年ほど前には、常に激しい痛みを伴い、10分も立っていられないほどの状態になってしまったという。坐骨神経痛による左足のくるぶしから足の付け根のしびれも消えることはなかった。
「立っていても、座っていても痛くてつらい。それまではなんとかこらえながら芝居を続けていましたが、しんどくてもう限界でした。“妻と子供を抱えて、これからどうやって生きていけばいいんだろう”と真剣に悩みましたね。最初は、仕事ができなくなったらどうしようと思っていたんですが、次第にどう生きていけばいいのか、とまで思い詰めて。自分は絶対にうつになんかならないと思っていたのに、悪いほう悪いほうにばかり考えるようになってしまっていた。いま思えば、かなり危険な状態でした」
美木は思い切って仕事を休み、腰の治療に専念することを決意した。しかし、腰痛治療で有名な病院を受診しても、帰るころには再び痛みに襲われることの繰り返し。遠方の病院も訪ねたが、いっこうに症状はよくならなかった。
そんな折に出合ったのが、高齢者向けの呼吸トレーニングだった。
「ある医師に寝ながら行う呼吸法を教えてもらったんですが、老人向けだったのでぼくには全然効かなかった。でもそのとき、『呼吸法には何かあるかもしれない』と思ったんです。それから武道やスポーツなどいろいろなジャンルの本を買ったり、図書館に行ったりして文献を読みあさりました。そしてある武道の本に『臍下丹田』という言葉が何度も出てきたことから、ピンときたんです」
丹田とは、へそのすぐ下あたりにあって五臓の中心に位置すると考えられ、禅や武道において重視されている場所。試行錯誤の末、丹田を締めるように呼吸するとインナーマッスルの腹横筋が最も収縮することに気づき、さらにその裏側にある多裂筋を鍛えれば腰痛になりにくいという文献も見つけた。「この方向性は間違っていない」と、毎日鏡の前で夢中になって呼吸法を研究した。
こうして完成させたのが、ロングブレスだった。
※女性セブン2012年8月23・30日号