東日本大震災で日本中が痛感した「電気」の重要性。今、光熱費タダで災害時にも電気が使える「スマートタウン」が誕生し、完成住戸は瞬く間に完売して、注目を集めている。開発秘話を作家で五感生活研究所の山下柚実氏が報告する。
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最近、やたらと耳にする「スマートハウス」というコトバ。節電仕様や太陽光発電付きの「エコ」な家のことらしい。でも、その実態については、今ひとつ掴めていない人が多いかもしれない。
「スマートハウス」は、日本経済を牽引するヒット商品になるのではと、熱い期待を集めている。関連市場の規模は2011年と比べ2020年には279%に拡大、額にしてなんと3兆4755億円に達する予想もある(富士経済の調査)。日本経済、とかく暗いニュースが多い中で、「スマートハウス」特需が一筋の希望の光になるのだろうか?
ちなみに「スマートハウス」の「スマート」は、スマホと同じく「賢い」という意味だ。その賢い家が一軒のみならず集合し「スマートタウン」として産声をあげたという。それも、被災地・宮城県で。
『スマートコモンシティ明石台』は東北復興の一翼を担っていると聞き、さっそく現場へ足を運んでみた。 仙台駅から地下鉄で15分ほど。泉中央駅でタクシーに乗り換え、しばらく走ると住宅開発地が見えてきた。造成中の宅地の隣で、里山から野鳥の声が響く。積水ハウスが開発中の『スマートコモンシティ明石台』は431区画、3~4年かけて完成する大規模プロジェクトだ。今はまだその一部が姿を現わしたところ。
私のお目当ては、「グリーンファースト ハイブリッド」というシステムを使ったスマートハウスがある街区。一見すると、普通の住宅と変わらない。しかし、瓦状の屋根は、実は太陽光パネルと一体型だという。
同社・佐藤満長仙台支店長(55)はこう説明する。
「弊社のスマートハウスの特徴は、太陽電池と燃料電池、蓄電池の3つの電池を組み合わせ自動連動させた点です。世界初のこのシステムで、省エネと同時に創エネ、蓄エネを実現しました。停電時には、3電池で自立的に運転するシステムに切り替わり、即座に電気がつくことになっています」 試算では、まち全体の年間発電量が2508MWh(メガワットアワー)。それに対して消費量は1469MWh。
「発電量のほうが約1.7倍と多い。余った電気は売電し、近隣の地域へ1000MWh以上も供給できる計算です」と佐藤氏は胸を張る。
「いわば、まちが丸ごと発電所というわけです」
3つの電池を組み合わせ、バランスよく制御するための情報技術が、ホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)だ。電気の使用状況を液晶パネルで「見える化」するとともに、3電池からの電力供給を自動制御して切り替える。ガス代を含めても、電力会社に売電できる分と相殺すれば、光熱費はほぼゼロに。「スマート」たるゆえんだ。この3電池を備えた「グリーンファースト ハイブリッド」の7棟は、完成からあっという間に完売したとか。秋にはさらに18棟増えて25棟になる。
「街区の3割程度が、グリーンファースト ハイブリッドの家になる予定です。その他の家も、すべて瓦形の太陽光発電が標準装備となります」
※SAPIO2012年8月22・29日号