香港の活動家らが尖閣諸島(沖縄県石垣市)の魚釣島に上陸した問題。中国情勢に詳しいジャーナリスト・富坂聰氏は日本側の対応に危機感を募らせる。
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終戦記念日は日本にとって試練の一日となった。まず隣国・韓国の李明博大統領が天皇陛下に謝罪を求めたのに続き、従軍慰安婦問題での対応を唐突に迫るなど歴史問題を蒸し返して日本への攻勢を強めてきた。
一方、南では尖閣諸島に香港の活動家らが東京の魚釣島買取りに抗議して不法な上陸を強行したのだった。
上陸した保釣行動委員会のメンバー5人のほか船内で逮捕された9人を含めた計14人は、最終的に入管法違反で退去強制されることが決まったが、この政府の決定に対して日本国内では「弱腰だ」、「毅然とした対応を」、「法に則って起訴すべし」との意見が盛り上がった。
毎度繰り返される議論で、思い出すのは昔の社会党だ。原則論を振り回して本当に何か解決に向かうのだろうか。
今回は自民党が早速政局に利用し、裁判にかけろと民主党に迫っている。外交を政局に利用した民主党の鳩山政権がどれほど日本外交を後退させたかを熟知してる――その利益享受者は自民党だ――はずの自民党が野党になったらまったく同じことをするとは理解に苦しむ。外交・安全保障に関しては政権交代しても継続性を持たせ、互いにこの問題では足を引っ張らないくらいの最低限のルールは持てないものだろうか。
やはりこの国の政党には党益あって国益なし、その点では民主党も自民党も同じレベルなのだろう。しかも2004年に上陸した反日活動家たちを退去強制にすると判断したのは自民党ではないのか。自党の外交姿勢さえ一貫させられない政党が、どうやって一国の外交を担えるのか。
また退去強制ではなく裁判という選択のなかで、日本の国益はどのような足し算引き算になるのか。そうした冷静な計算なく、「すべきことする」というのなら、やはり思い出すのは「ダメはことはダメ」のおたかさん(土井たか子元社会党委員長)だ。