4月22日に新潟県佐渡市でヒナの誕生が確認されたトキ。自然界では36年ぶりで、3組のペアから生まれた8羽すべてのヒナが巣立ち、順調に成育しているというが、関係者をハラハラさせたのが、5月5日に2番目の孵化が確認された3羽のヒナのうちの1羽。6月6日の深夜、巣から落ちてしまったのだ。
翌朝、落ちたヒナは田んぼにいるところを発見される。せっかく親鳥がヒナに近づき助けるような様子を見せても、ヒナは餌をねだることもせず、巣に帰れない。その後数日間、ヒナはふらふらと車道に出たり、カラスに追われるなど、“九死に一生”状態が続き、再び行方不明になってしまう。
そして、行方不明になってから5日後、タケノコ狩りに来ていた近所の老人が巣から離れた林の中にいる迷子のヒナを発見。2日後には親鳥や“きょうだい”と合流し、一緒に餌を食べて飛翔する様子が確認された。環境省佐渡自然保護官事務所首席自然保護官の長田啓さんはいう。
「これであの子も生きられる、とやっと思えた瞬間でした」
公募された名前の中から3羽のヒナに一緒に付けられた名前は「きずな」「ぎん」、そして偶然にも「きせき」。まるで迷子になったヒナの奇跡の生還を予見していたかのような展開だった。
※女性セブン2012年8月23・30日号