ニューヨーク・ヤンキースのイチローの資産管理会社IYI社の幹部が関係した不動産ビジネスを巡りトラブルが発生、訴訟にまで発展している。
IYI社とはイチロー、弓子夫人、愛犬の一弓の頭文字を取ったイチローの資産管理会社だ。CEO(最高経営責任者)はイチロー、CFO(最高財務責任者)には弓子夫人が就いている。
IYI社はカリフォルニア州マリーナデルレイ市に本店を持つ。これまでロスやサンフランシスコの建物を購入し、不動産ビジネスを展開してきた。同社の戦略投資顧問のG氏は、新潟県・妙高山の霊園開発を巡って地元開発業者から訴訟を起こされ一審では敗訴している。だが沖縄でも別のトラブルが持ち上がっていた。
対岸には基地問題で揺れるキャンプシュワブが見える。沖縄県名護市。ジュゴンが訪れることで有名な海岸だ。手つかずの自然が残り“やんばる(山原)”と呼ばれる沖縄本島北部は、観光地として賑わう南部と異なり未開発地が多い。
IYI社が開発計画に携わった海岸線の土地は合計すると約3万5000坪。観光業を営む地元関係者は言う。
「近隣にはゴルフ場を備えた沖縄でも有数のリゾート地・カヌチャリゾートがある。ここには野球選手をはじめ芸能人もよく訪れている。その近辺には所ジョージさんも土地を購入し、プライベートビーチを作っている最中です。ただ、IYI社はここに別荘などではなく、リゾート施設を作ろうとしていたみたいですね」
関係者によると同地を開発しようとする事業会社に対しての融資を開始したのは2009年3月頃。登記上でも5億円の融資が確認できた。
事業会社社長が語った。
「イチローさんの会社に投資して頂いているのは事実です。リゾート施設計画を進めるにあたってまずは土地を取得する必要があって、ご融資頂いた。私はIYI社に個人的なコネクションがあったものですから。イチローさん? いえいえ、IYI社のファンドマネージャーの立場にある方です」
この社長は、IYI社の「ファンドマネージャー」が誰かについては口を閉ざしたが、IYI社から融資を得ていることは認めていた。
この社長によると計画は総額120億円に及ぶ巨大プロジェクトというが、現在に至っても開発はまったく進んでいない。地元不動産業者はこう口を濁す。
「地元の理解が得られていないんでしょう。はっきりいって投資に向いている土地とは言えない。何といっても基地問題を抱える辺野古が対岸にある。もし基地ができたら、リゾート開発なんて誰もできない。となれば価値なしのただの海岸。1億で買い手が付けば御の字です。そんなリスクを抱えて開発するなんて沖縄を知らない素人がやることです」
別の地元関係者が続ける。
「2009年は民主党の政権交代に沸いていた時期です。当時の鳩山政権は普天間基地の県外移設を公約に掲げていた。辺野古移設を避けられれば土地が高騰する。そうした状況に乗ってしまったのではないでしょうか。結局、基地問題が呼び水となって政権は崩壊。県外移設も白紙になってしまった」
※週刊ポスト2012年8月31日号