今年5月下旬、大腸がんの摘出手術を受け、現在抗がん剤治療のため自宅療養中の荻野アンナさん(55才)。大学教授と作家の仕事を続けながら、15年ほど前から高齢の父と母の介護が始まり、さらには食道がんを患った事実婚のパートナーの看病に明け暮れる日々。
過労からうつ病を発症し、治療を受けながら父とパートナーを看取った。そして、今度は自らのがんと対峙することとなった。
厳しい介護生活を経験する荻野さん。しかし、介護する側の心身に負担がかかりすぎると、共倒れの心配もある。実際にいま、日本の各地で、介護する子供が病死し、親も子の側で亡くなっていたというような孤立死や、介護側が追いつめられることによる介護殺人が起きている──。荻野さんが、自らの介護生活について話す。
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わかる、というよりも、他人事ではありません。私だって、いつも一歩手前の連続です。父を介護していたときは、「父を殺して私も死のう」と思い詰めたことが2回ありました。母に対してもつい先日、食事を届けるときに、包丁を持って母の側に立っている自分の姿を想像してしまった。
私たち親子が、共倒れや介護殺人を体験せずにすんでいるのは、神様のおかげ。福祉の費用を削るのが社会の流れですが、家族の負担をもっと少なくしてもらいたい。でも個人的には、悔いの残らないように、母にもできるだけのことをしたいと、体が動いてしまうんです。
実は昨日、久しぶりに美容院に行って。そこのオーナー夫人と話をしてから、とても気分が晴れやかになったんです。
その女性も20年ほど前、がんを患っていたんですって。術後、抗がん剤治療を受けていたときも、お店は絶対に休まなかった。そしてその後もがんは再発せず、現在も仕事を続けています。彼女いわく、「私は絶対に仕事を続けるという目標があったからサバイバーになれた。助かる人は、私みたいに絶対の目標がある人、もしくはノーテンキな人」と。そういえば、長寿の父もノーテンキでした。
※女性セブン2012年8月23・30日号