今なお、人気が衰えることのない“プロレス界の巨人”ジャイアント馬場。その素顔はどんなものだったのか、生前の馬場さんと親交のあった演出家のテリー伊藤氏が回想する。
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馬場さんは記憶力が抜群なんですよ。僕がまだ、本名の伊藤輝夫でテレビ番組の演出をしていたときに、馬場さんに、僕が担当したものまね番組に、審査員として出てもらったことがあったんです。番組には、馬場さんのまねをする人も出演する予定でした。
馬場さんのものまねといえば、コミカルなヤツが定番じゃないですか。それをわかっていて、馬場さんは審査員として出てくれて、実際のものまねをニコニコしながら見てくれました。そのときは、「イイ人だなぁ」という印象しかなかったんですが、驚いたのは2回目に会ったときです。
僕がテリー伊藤という名前でタレント活動を始めた後、パーソナリティをやっていたラジオ番組(ニッポン放送『のってけラジオ』)にゲストで馬場さんに出演してもらったときです。僕が「初めまして」と挨拶をしたら、馬場さんは首をひねって、「初めてじゃないですよ」って言ったんです。そう、約10年前に出演したバラエティのディレクターだった僕を覚えていてくれたんです。あれには、びっくりしました。
たしかに、テレビ局のスタジオでは簡単な打ち合わせをしたとは思いますが、数分くらいのもので、僕は一番組スタッフですからね。あのニコニコしていた人が、実は、本当に周りをよく見ていたんだなって、そのときわかったんです。
それ以降も、僕のラジオ番組には何度もゲストで来ていただきました。馬場さんは読書家でもあり、大変な博識で何でも知っていました。また、「好きな食べ物は何ですか?」といった他愛もない質問にも喜んで答えてくれる。ゲストで来て頂くと、なんというか、ほのぼのとして実にいい雰囲気の番組に仕上がるんですよ。
※DVD付きマガジン『ジャイアント馬場 甦る16文キック』第4巻より