消費税引き上げ法案が成立し、2014年4月には5%から8%へ、2015年10月からは8%から10%に引き上げられる。
消費税には所得が低い人ほど負担率が重くなる「逆進性」があるとされる。その解消のために検討されているのが、食料品などの“生活必需品”の税率を低くする「軽減税率」である。
ヨーロッパなどでは消費税に相当する付加価値税に「軽減税率」を導入している国が大半だ。だが、何を生活必需品と見なして税率を低くするかは国によって異なり、そこにはその国なりの理由があるようだ。
導入が検討されている「軽減税率」が何に適用されるかは気になるところ。そこで、世界の軽減税率品目を見てみたい。
まず食料品に関しては、「贅沢品」か否かで線引きしている例が多い。
標準税率20%のイギリスでは食料品は軽減税率の対象とされて税率0%だが、外食は贅沢と見なされて20%の税金がかかる。ただし、パン屋で冷たいサンドイッチを買えば0%なのに対し、名物のフィッシュ&チップスやファストフード店のハンバーガーはテイクアウトでも20%だ。
「家に持ち帰って食べる惣菜などは、“温かいものは20%、温かくないものは0%”が原則。ただし、品質を保つために温めてあるものは0%だから、そのへんが曖昧ですね」(イギリス在住の日本人)
こうした線引きの曖昧さを明確にしようと、イギリス政府は税制改革案で「周囲の気温より温かいか否か」を基準とし、10月から温かい食べ物には一律20%の税金をかけると発表した。
ところが「焼きたてパンは0%なのに、なぜパスティ(半円形のパイで、イギリス庶民の伝統的な食べ物)は20%なのか」と反発が起こり、結局「温め直したり常に温めていないかぎり0%」と修正されることに。
日本にあてはめると、弁当屋の温かい弁当はどうなのか? コンビニで冷たい弁当を買って家で温めたら軽減税率で、コンビニで温めてもらったら軽減されないのか?――といった議論になりそうだ。
ちなみにドイツやフランスでは、ハンバーガーは店内で食べると外食として課税され、テイクアウトの場合は軽減税率が適用される。中央大学法科大学院教授の森信茂樹氏はこう説明する。
「イギリスでも当初は店内で食べるのかテイクアウトかで区別していたが、“テイクアウトします”といってゼロ税率で買い、途中で気が変わったと店の隅で食べるようなケースが頻発。そのため、温度というごまかしのきかない基準を考え出した」
面白いのはカナダで、ドーナツの注文個数が5個までなら「店内で食べる」と見なされて5%の税金がかかり、6個以上なら持ち帰りと見なされて0%。日本なら店内で5個も食べる人はまずいないだろう。
※週刊ポスト2012年8月31日号