8月1日から、橋下徹・大阪市長による公募で集まった24人の区長による本格業務が始まっている。なかでも注目を集めるのが、「大阪市の問題児」といわれる西成区だ。生活保護受給率や高齢化率が市内最高であり、全国最大の日雇い労働者の街・あいりん地区を抱える。担当する臣永正廣区長は元フリーライターで、徳島県町長も経験しているというユニークな経歴の持ち主。西成の改革、橋下市長の素顔などを聞いた。(聞き手=ノンフィクション・ライター神田憲行)
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--どうして西成区の区長に応募されたのですか。
臣永 ほか知らんもん。
--率直すぎます(笑)
臣永 うん。記者会見でもそう答えたら、「こそんなエエ加減な奴いらん」いうて、山ほどクレーム来たよ(笑)。でも大阪に住んだことがないから、此花区とか中央区と聞いても課題はピンとこないのよ。でも西成区は東京の山谷絡みで取材したことがあるから、課題は他の区より少しは見えていたから。
--公募の選考はどのように進んだのですか。
臣永 自分で応募したい区を選んで、現状と課題のレポートを提出して書類選考が1次。面接は2回あって、1次面接が大阪市役所の局長と大学教授の3人。2次が橋下市長と中田宏顧問(元横浜市長)をはじめとした面接でした。西成区の応募者は90人超えてた。全体で4番目の「人気」だったみたいです。
選考で橋下さんが見ていたのは2点だけだったと思う。住民の「自主自立」を考えているか、そのための解決策を自分で探せる人か。今までの区長は大阪市役所区の職員で、なんとかやり過ごしておれば市役所に戻れるから、改革とかなかなか本腰になれないでしょう。
--橋下市長はどんな方ですか。
臣永 区長にものすごく気を遣っているのがわかる。
--橋下市長はメディアにたいへん評判が悪い。臣永さんはフリーライターでした。そういう人の下で働くのに抵抗感は無かったですか。
臣永 カメラの前で喋ることは過激でも、メディアに対しても丁寧ですよ。毎日2回のぶら下がり記者会見を欠かさず続けていることも、私のところに来た新聞記者が「内容はともかく、姿勢は認める」と評価していたよ。意見が対立するテーマを敢えて取り上げて、騒ぎを起こすことで問題を表に出す手法を意図的にとっているんでしょう。メディア戦略としては上手やね。賢い人です。
※臣永正廣(とみなが・まさひろ)プロフィール
1954(昭和29)年、徳島県生まれ。大阪市西成区区長。フリーライター、徳島県那賀川町長などを経験したのち現職。