橋下徹・大阪市長による公募区長のひとり臣永正廣・西成区長。生活保護受給率や高齢化率が市内最高であり、全国最大の日雇い労働者の街・あいりん地区を抱える。「大阪市の問題児」といわれる同区をいかに改革するのか。元フリーライターで、徳島県町長も経験しているというユニークな経歴の区長に、区民の反応、西成三大課題について聞いた。(聞き手=ノンフィクション・ライター神田憲行)
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--新区長として赴任されて、区民の反応はいかがですか。
臣永 フェイスブックやツイッターで毎日「アホ」とか「田舎に帰れ」とか来てるよ(笑)。区のホームページ経由でも罵詈雑言のオンパレード、職員さんが律儀にプリントアウトして見せてくれてる(笑)
--そういうのはもう気にしない、と?
臣永 凹むわ! 鈍感力を発揮すればいいんだろうけれど、現場ってやはり大変ですよ。夏は毎週週末、どこかで盆踊り大会があるから「顔見世興行」のつもりでずっと顔出してる。毎週土日は盆踊りを踊ってます(笑)。
--就任の記者会見で、西成の問題点として「生活保護、雇用、貧困ビジネス」を挙げられていました。どのような解決策を考えていますか。
臣永 貧困ビジネスは、たとえば生活保護手帳を取り上げている闇金業者がいる。支給日に借金取りが付いていって、支給されたそばから現金を取り上げる。博打を紹介してはめて、借金漬けにする。こういうのは違法なんだから、パクって(逮捕)いくしかないわね。警察と密接に連携していくために現職警察官を市職員の併任採用してもらって活躍してもらうとか、今まで出来無かった仕組みを作ればそれなりに結構やれるんじゃないかと思う。
生活保護と雇用は表裏一体の問題。先日、区のケースワーカーが遺産相続を受けたことから生活保護を支給打ち切った70歳台のお婆さんから、千枚通しで刺されるという事件が起きました。そういう意味では厳しい適正化と同時に、高齢でも仕事や生きがいをもって生きられる環境づくりを考えないといけない。
--たとえばどんなことを?
臣永 私はベトナムをバイクのカブで縦断した経験があるんだけれど、西成の労働者向け簡易宿泊所って、アジアのバックパッカーが集まる安宿街みたいな雰囲気があるんですよ。実際、カオサン通り(バンコクの旅行者向け安宿が集まっている世界的な観光地)みたいに、外国人旅行客が西成のそういうところに泊まったりしている。もっと簡易宿泊施設を整備して、若い外国人観光客を呼び込むようにしたい。
外国語はいま英語と中国語、韓国語の表記しかないから、地元の大学生ボランティアに協力してもらってスペイン語なども作りたい。隣接している区長さんたちと協力して、奈良や京都までミニバスツアーを走らせたりする。若い人が集まれば街の雰囲気も変わるし、清掃や観光客目当ての仕事が出来て雇用も生まれる。貧困ビジネスで食い物にされているおっちゃん、おばちゃんたちもそをそういう仕事で生きがいを見つけてほしい。
※臣永正廣(とみなが・まさひろ)プロフィール
1954(昭和29)年、徳島県生まれ。大阪市西成区区長。フリーライター、徳島県那賀川町長などを経験したのち現職。