1日に350万人以上が利用するという東京の大動脈、JR山手線。8月20日、埼玉県熊谷市で開かれた日本第四紀学会で、首都大学東京などの共同研究チームが発表したのは、この山手線を、南北に真っ二つに切り裂く新たな活断層が存在する可能性だった。
北区・田端駅付近から新宿区・四谷付近まで少なくとも7kmに及ぶというこの活断層の付近には上野や新宿の繁華街、東京ドームシティ アトラクションズのほか、人口密集地が存在する。
今回発見された活断層で想定される地震では、今年3月に想定震度を6強から7へと修正した東京湾北部地震を上回る被害が考えられると指摘するのは、防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実氏だ。
「今回発見された断層の大きさからすると、地震の規模は、東京湾北部地震と同程度のM7級といわれています。つまり、より都心に近い東京駅や新宿、上野などで東京湾北部地震と同じ最大震度7を記録する可能性があるんです。その被害はより大きな、これまで日本が経験したことのない想像を絶するものになるでしょう」
1981年に「震度6強の地震が来ても即座に建物が破壊されない」ことを目指し、改正された建築基準法。このいわゆる「新耐震基準」をもとに建てられた建物は簡単に倒壊することはないとされ、実際、1995年に発生した阪神・淡路大震災でもそのことは証明されている。
一般的に都心部に建てられたビルや住居はこの新耐震基準の下で建てられているため、倒壊のリスクは少ないと思われがちだが、前出・渡辺氏はこう警鐘を鳴らすのだ。
「政府の東京湾北部地震の被害想定で、15万棟の建物が全壊するとされているように、都心にも古い耐震基準で建てられた建物は少なくない。今回の震源地でいえば、歌舞伎町の雑居ビル群や大久保、新大久保、上野のアメ横など古い建物では、広範囲で建物が倒壊する危険性があるでしょう。
また建物が倒壊しなくても、東京ドームやスカイツリーなど狭い場所に人が集まってしまう場所では、揺れによって人の雪崩が起きてしまう可能性もあります」
繰り返すが、今回の活断層の近くには新宿や上野など、繁華街が存在する。飲食店が多く、建物が密集するこうした場所では、さらなる危険性も。
「火を使うことが多い飲食店が密集しているこれらの地域は、いうまでもなく地震によって火災が発生しやすく、あっという間にあたり一面火の海になります。しかも、避難するにも普段から人で溢れている場所なので、四方から火の手が上がれば、集団パニックが起こり、逃げ遅れてしまう人もたくさん出てしまうでしょうし、消火活動も困難を極めるでしょう」(前出・渡辺氏)
こうした都市部での大規模な火災では、炎を伴う旋風が発生し、さらには炎の竜巻が巻き起こることがあると話すのが武蔵野学院大学・島村英紀特任教授(地震学)だ。
「都市部での火災で最も恐ろしいのがこの“火災旋風”です。時には鉄をも簡単に溶かしてしまうほど高温な炎の火柱が立ち上がり、より大きな被害を生んでしまうのです。1923年に発生した関東大震災では、この火災旋風によって21万棟以上の家屋が焼失し、10万人以上の人が亡くなってしまいました」
※女性セブン2012年9月6日号