大企業の経営者や幹部には、風水をたしなむ人が多い。風水とは、成功のために必要な環境を整理する「統計的学問」だからだ。とりわけ中国では、風数で世界が回っている。現代風水師で九州風水研究所を主宰する未知氏が、中国の状況を解説する。
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生活の中に風水が浸透する中国では、結婚、引っ越し、起業など人生の転換期に風水師の助言が不可欠。多くの大企業は高名な風水師と専属契約を結び、さまざまな場面で助言を求めています。
こうした習慣は自治体や官公庁にも根付き、ときに社会問題になることも。遼寧省瀋陽市陽市では、裁判所の新庁舎移転の日取りを風水師に相談。鑑定料3万元(約42万円)を公費で支払ったことが問題化し、幹部が辞職に追い込まれました。
香港の風水信仰はさらに過激で、企業間のバトルに発展することも。有名なのが、長年ライバル関係にある中国銀行と香港上海銀行の“新社屋バトル”です。香港中心部に並んで建つ両行は、専属風水師の助言の下、1985年から1990年にかけて競うように新社屋を建設。先に竣工したのは、地上44階建ての香港上海銀行。対する中国銀行は、5年遅れで地上70階を誇る超高層ビルを建設しました。
問題となったのは、中国銀行新社屋の“鋭利な刃物”を連想させるデザイン。風水で「不吉」とされるビルの鋭角部分を向けられた香港上海銀行は怒り、屋上に“大砲型”オブジェを設置して対抗。この一件は地元メディアでも大きく報じられました。
香港市民は住宅購入にも風水環境を重視。気の流れを乱すT字路の突き当たりに面した物件や、広東語で「死」と似た発音の「4」の階数は敬遠されます。ある新築高級マンションは、4・14・24などの階数表記を除外。実際は46階建てなのに、最上階は最も縁起の良い「88」階と表記されています。
台湾自慢の高層建築「台北101」も「8」にちなんで、逆台形を8層に重ねた奇抜なデザインを採用。力強く天に向かって伸びる“竹”をイメージして作られました。
※週刊ポスト2012年9月7日号