ジリ貧タイガースを象徴する事件が起こったのは、8月17日のヤクルト戦後のミーティングだった。レフト・マートンの2度にわたる拙守を、関川浩一・外野守備コーチがなじったところ、マートンが逆ギレして乱闘寸前になったのだ。
マートンは金本の代役として、慣れないレフト守備を任されていたわけで、批判に反論もあっただろうが、この一件で即二軍へ“懲罰”降格。しかし、ファームの試合では逆転弾を打つなど大活躍。皮肉な展開とはこのことだろう。
このところ、阪神のやることはすべてが裏目に出る。マートンの一件も、「やる気がない」などと批判されるなか、和田監督が我慢して使っていたら起きた事件。他の采配も裏目、裏目だ。
翌18日のヤクルト戦では、1点を追う7回無死一、二塁で新井貴にバント指令。バットに当てはしたものの、二塁走者の新井良は三塁でタッチアウトとなり好機を逸する。21日の中日戦でも9回の無死一、二塁でまたも新井にバントを命じて空振り。飛び出した二塁走者・柴田がアウトになって自力CS進出の目が消えた。
ちなみにその新井貴自身も、良かれと思ったことが裏目に出た。母校・広島工業が甲子園に出場したことを喜び、後輩たちにプレゼントを贈った。背中に「勇猛精進」と書かれた特製Tシャツで、球児たちはこれを着て本戦に臨んだが、逆転のチャンスにことごとく凡退し初戦敗退。まさに今季の新井を彷彿とさせる状況に、ファンからは、「チャンスを潰す、“新井病”が伝染ったんちゃうか」との心ない言葉が飛ぶが、反論できない。
※週刊ポスト2012年9月7日号