竹島や尖閣諸島をめぐり韓国や中国とにわかに緊張が高まっている。そこでいち早く、領土問題に取り組んできた安倍晋三・元首相にいま、日本はどう対応すべきか聞いた。
――日本の政治の混乱に乗じるかのように、韓国の李明博大統領が竹島を訪れ、中国・香港の活動家が尖閣へ上陸した。領土問題に取り組んできた政治家として、日本はどう対応すべきと考えるか。
安倍:野田政権の対応としては、やはり、基本的には、上陸を阻止する努力をすべきだったと思います。尖閣について、中国はこの数年間、極めてチャレンジングになっています。『人民日報』や王家瑞・対外連絡部長は、尖閣について「核心的利益」と言及している。
ところが、日本では領海侵犯を取り締まるのに漁業法や入管難民法しかなく、根拠法やそれに伴う執行権などが弱い。例えば、実力阻止をする上においては、相手が何か武器になるものを持っているかもしれませんから、そのときの武器使用権限等も含めて、検討していく必要が出てきている。
――だが、日本の法整備は進んでいない。
安倍:いま、ロシアのメドベージェフ首相が北方領土へ行き、それを見た韓国の李明博大統領が竹島へ行き、またそれを見て中国が尖閣に上陸した。これらは連携しているわけではないけれども、連鎖した動きであることは間違いない。
この連鎖の原点は、民主党政権の誕生なんですよ。鳩山(由紀夫)さんが2009年の日中韓首脳会談で、「今まで米国に依存しすぎていた。アジアをもっと重視する政策をつくり上げていきたい」といってのけた。このことが、この政権は安全保障とは何かということがわかってないというサインになってしまった。(露・中・韓は)この人たちが政権にいる間に取れるものを取ろうと考えたんだろうと思いますよ。
すでに占拠されてしまったわが国の領土、つまり北方四島や竹島の領土問題を解決する上においては、外交交渉によるしかないわけです。一方、我々がしっかりと実効支配をしている島に対する挑戦を跳ね返すのは何かというと、それは純粋に軍事力です。この尖閣については、われわれは本気でこの島を守りますよという意思をちゃんと示していくべきだろうと思います。そのためには、やはり日本人が尖閣に常駐する必要があるでしょう。
●聞き手/長谷川幸洋(ジャーナリスト)
※週刊ポスト2012年9月7日号