オスプレイ配備、辺野古移設問題で揺れる普天間基地。その内部に初めて日本のカメラが入った。フェンスの内側で映し出されるものは何か、ジャーナリスト・笹川英夫氏がリポートする。
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基地へと続く道には、左右に障害物が設置され、車は蛇行を余儀なくされる。テロリストによる強行突破を防ぐためだろう。厳重な警備に、改めてここが米軍の重要基地であることを気付かされる。
ゲートで出迎えた広報の担当官はいう。
「これから、業務の様子だけでなく、この施設内での日常もお見せします。おそらく、日本のマスコミに公開するのは、これが初めてでしょう」
普天間基地――。宜野湾市のほぼ中央、周囲を住宅地に囲まれた、広さ東京ドーム約100個分(約480ヘクタール)のこの基地は、米海兵隊の拠点として主にヘリ部隊による兵員物資の輸送を担っている。配備された軍用機約50機、隊員と軍属約3000人。ここは東アジアの安全保障を担う重要拠点である一方、いま、辺野古移設、オスプレイ配備問題に揺れる渦中の基地でもある。
先導される車に従ってゆっくりと基地内を進むと、まず目に入ってきたのは、滑走路脇に整然と並べられたCH46だ。オスプレイはこの後継機として配備される。ベトナム戦争でも活躍し、既に現役40年以上。老朽化が激しく、15時間の飛行ごとに点検が定められているが、間近で見る機体は整備が行き届いている。
3機ほど収納できる格納庫では機体上部を外し、プロペラ部などをチェックする隊員の姿を目にした。格納庫を出ると、100メートルほど離れた場所でちょうどCH46が離陸するところだった。声を張り上げないと会話ができないほどの爆音が鳴り響く。
数百メートル先にはC130輸送機部隊の隊舎。アフガンやイラクへも派遣された部隊だ。2階にあるオペレーションルーム。一見、大企業のオフィスといった様子で、100平方メートル超の部屋で、10人ほどの士官たちがパソコンのキーボードを叩く。ここで訓練のスケジュール管理などが行なわれているのだ。彼らはしかし事務屋ではない。歴としたパイロットである。陸海空軍と違い、人員の少ない海兵隊は事務も実地もすべて負担し合う。
1階の格納庫近くにはパイロット準備室がある。個人のロッカーが並び、中にはヘルメットやベストなどの装備が保管されている。日本生まれのブラッドリー大尉がロッカーを見せてくれた。彼のヘルメットの横側に旭日旗が描かれている。赤いテープで自作したのだという。彼が所属する第152空中空輸部隊のニックネームは「SUMOS」。そう、日本の相撲から取った愛称だ。
撮影■笹川英夫
※週刊ポスト2012年9月7日号