うだるような残暑が続いているが、巷では早くも秋冬用の“発熱肌着”が売られ始めている。
口火を切ったのは「セブンプレミアム」でおなじみの、セブン&アイホールディングスのPB商品「ボディヒーター」(390円~1490円)だ。
「ボディヒーターは綿やシルクの良質素材を使って肌触りを高めています。シビアな製品テストをすると、価格パフォーマンスと機能バランスの点で、ユニクロの『ヒートテック』よりも高い」(素材メーカー関係者)
保温・発熱効果を持たせた肌着市場は、いまや群雄割拠の様相を呈している。ユニクロやセブンの他にも、イオンの「ヒートファクト」、西友の「エコヒート」、ユニーの「ヒートオン」などがしのぎを削っている。
しかし、販売実績を見てみると、発熱機能を訴求して先鞭をつけたユニクロに他社は遠く及ばない。
2003年発売のヒートテックは累計販売枚数で約2億9000万枚に達し、1シーズンだけでも1億枚を売る“お化け商品”に成長した。かたや、他社製品もそれぞれ売り上げこそ伸ばしているものの、ヒートファクトでも年間3000万枚がせいぜい。ボディヒーターも初年度の販売計画は約1500万枚といった状況である。
ヒートテックの強さの秘密について、流通コンサルタントの月泉博氏が解説する。
「ユニクロはテレビCMなどで1製品を集中的に売り込む販促力に長け、特にヒートテックはCSR(企業の社会的責任)活動の一環として協業する東レの優れた素材開発力を盛んにPRしてきました。そんなイメージが消費者にも浸透しているので、同じ履き心地ならヒートテックのほうがいいと思わせてしまうブランド力は圧倒的です」
しかし、後発組にもメリットはあるという。
「かつてユニクロのフリースや990円ジーンズを真似して他社がいっせいに2番、3番煎じを狙ったときには惨敗しましたが、この発熱肌着だけは“二匹目のドジョウ”がいた。それだけ市場が拡大する余地が残っているのです。
言葉は悪いですが代用品マーケットが大きくなればなるほど、本家ヒートテックの存在感が際立って結果的にユニクロも潤う。そんな現象になっているので、ユニクロは『どんどんやってください』という心境だと思いますよ」(前出・月泉氏)
共存共栄の発熱下着商戦だが、今年も最後にほくそ笑むのはユニクロなのだろうか。