想定被災者40万人──。衝撃の数字が明らかになったのは、8月21日に開かれた静岡県防災・原子力学術会議の地震・火山対策分科会。静岡大学防災総合センターの小山真人教授がこう報告した。
「地震やマグマの突き上げで富士山が『山体崩壊』すれば最大約40万人が被災する」
しかも、発表資料には<被災人口:避難できなかった場合は死者数に相当>──と書かれていた。
内閣府の富士山ハザードマップ検討委員会は、2004年に作成した報告書で富士山の噴火について、1707年の宝永噴火と同規模になると仮定し、噴石等の直撃による被害死傷者を最大1万3600人と見積もった。今回の想定被災者数はそれをケタ違いに上回る。発表に同席した静岡県危機管理部の担当者も驚きを隠せない。
「突然の発表でわれわれもびっくりしました。事前の説明もありませんでしたから」
これほど危険な「山体崩壊」とは何か。武蔵野学院大学の島村英紀特任教授(地震学)が解説する。
「山体崩壊とは噴火や地震などにより山の3分の1から4分の1が崩れる現象です。崩れた山の岩石や土壌は時速100kmの猛スピードで斜面を下る『岩屑なだれ』となり、周辺地域に甚大な被害をもたらします。火山の災害には、このほかに火砕流や爆発的な噴火など、怖いものがいろいろありますが、山体崩壊は過去に世界中で大災害をもたらしている、もっとも恐ろしい災害のひとつなのです」
時速100kmで一気に流れ出る岩石から逃れられるはずもなく、それが前述の、40万人は〈避難できなかった場合は死者数に相当〉という危惧となっているのだ。
※女性セブン2012年9月13日号