総務省の調査によると日本人の平均起床時間は6時39分で、早寝早起きの生活様式が定着しつつある。どんどん早くなる日本人の朝。そこに生まれる“需要”を逃すまいと街で活況をみせているのが「早朝ビジネス」。外食産業の状況を見てみよう。
市場が低迷する外食産業では、こぞって朝食強化策を打ち出している。「すき家」は24時間営業だが、朝、昼、夜の時間帯ごとに特化したメニューづくりに注力している。
「5月からは朝メニューとして、『たまごかけごはん朝食』を午前5時から午前10時半まで提供。200円という価格もあって入客数は1~2割増。朝に来店されるお客様の半数はたまごかけご飯を注文されます。牛丼以外のものも食べられる、と女性客も増えました」(すき家を運営するゼンショーホールディングス)
マクドナルドの「朝マック」はすでに市民権を得ているといっても過言ではないが、それに対抗してモスバーガーも「おはよう朝モス」を2009年10月から開始。今期に入って、従来の午前9時から午前7時台に開店を早める店舗を100店舗増やし、現在は全1382店舗のうち約300店舗が午前6時台から午前7時台の開店に。さらに20店舗で午前7時台の早朝営業を開始する予定だ。
「これまでは夜の来客を伸ばそうという考え方が強かったが、朝利用される傾向が強くなったので、朝の来客を伸ばそうという店舗展開を主流にしている」(モスフードサービス広報)
朝食強化の成果は、すでに実績として現われている。リサーチ会社エヌピーディー・ジャパンの調査によると、マクドナルド、ロッテリアなど大手ファストフードチェーン8社の2010年6月~2011年5月の朝食による売り上げは、前年比15.5%も増えた。1食あたりのメニュー数は12.4%減、客単価に至っては17.7%の大幅減。ところが食機会数が33.2%と激増したため、売り上げが伸びたのである。
例えば「おはよう朝モス」では、ハンバーガーとドリンクのセットが270円。ハンバーガーは単品で160円。コーヒーは単品で220円。午前11時以降の単品注文に比べてモーニングセットは110円も安い。これなら「朝、軽く食べていこう」という気持ちにもなるだろう。
ファミリーレストランでも朝の利用客が増え、逆に深夜客は減り続けているという。
「午前11時までがモーニングの時間ですが、子供を送り終えたお母さんたちがたくさんいらっしゃいます。年配のご夫婦のご利用も多く、客数で5%増、客単価は2~3%増えました。人気メニューは今年3月から始めた『エッグベネディクト』(ドリンク付き735円)で、“ホテルの朝食みたいに高級感があっていい”と好評です」(「ロイヤルホスト」を運営するロイヤルホールディングス広報)
また、ビジネスマンの間でも“リッチな朝外食”を求める人が増えているというのは、飲食業界のニュースサイト『フードスタジアム』編集長の佐藤こうぞう氏である。
「日本人のライフスタイルは夜型から朝型に移行しつつあり、サラリーマンも“脱アルコール”路線が明確になってきた。その流れで、もっとお金を出してもいいからリッチに朝食を食べたいという人のための店が流行っている。
例えば千駄ヶ谷駅前や池袋ルミネといった好立地に出店する『グッドモーニングカフェ』は、素材にこだわった健康的な朝メニューを提供。モーニングセットで580円、680円と、ファストフード店に比べて高めですが、連日、朝から多くの客でごった返しています」
たしかに、夜の居酒屋で使うお金を考えれば、朝食で少々贅沢してもタカがしれている。居酒屋チェーンがランチ営業するのは珍しくないが、そのうち朝定食を始めるところが出てきても不思議はなさそうだ。
※週刊ポスト2012年9月7日号