共産党一党支配のもと、経済成長を推し進め、極限にまで肥大化した中国に崩壊の病巣が広がっている。ジャーナリストの富坂聰氏が報告する。
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現在の中国は、2つの国に分かれていると言われるほど格差が大きい。しかし、民間消費が落ち込む一方で、公共事業を中心とする国有経済が伸びれば、格差をますます拡大させる恐れがある。
地方政府・役人はこれまで農民から土地を取り上げ、払うものを払わず、開発によって得た利益は地方政府、開発業者、地下勢力(マフィア)で分配してきた。
内需拡大のためにインフラ整備を行なうとなると、例えば鉄道では土地収用が必須となる。それを利用して役人たちがさらに私腹を肥やすことになる。実際、2008年のリーマン・ショック後に行なわれた総額4兆元もの公共事業では、少なくない額がインフラに使われずに直接、不動産投資へと回った。次回の大規模な公共事業もその時に匹敵する規模になるだろう。だが、前回と同じ轍を踏む可能性が高い。
近年頻発している暴動は、地方政府に土地を取り上げられた、社会の最底辺にいる農民が主体となっている。大規模公共事業によって、役人の飽くなき欲望が増殖すれば、奪われる側の農民の怒りはさらに激しくなるだろう。
農村部だけでなく、都市部でも格差は拡大している。役人たちが肥える一方で、大卒の学生の就職率は60数%しかない。就職氷河期と言われて久しい日本でさえ、大卒の就職率は93.6%(平成24年3月卒。今年4月1日時点)だ。しかも成熟期に突入した日本と違い、中国はまだ成長期にあるにもかかわらずだ。
これはいかに資源配分が不均衡であるかの証左だろう。富の偏在がより進めば、都市部で学生や労働者を中心に大規模に発生しているデモも頻度を増すことは確実だ。 超大型景気対策をすれば、一時的に延命を図れるだろうが、やればやるほど役人や彼らと結託した企業家たちに富が流れ込み、歪みが生じる。結果的に将来の時限爆弾を膨らませることになるのだ。
※SAPIO2012年9月19日号