8月21日に開かれた静岡県防災・原子力学術会議の地震・火山対策分科会。静岡大学防災総合センターの小山真人教授がこう報告した。
「地震やマグマの突き上げで富士山が『山体崩壊』すれば最大約40万人が被災する」
しかも、発表資料には<被災人口:避難できなかった場合は死者数に相当>――と書かれていた。
緊迫度を増す富士山Xデー。記者が富士山の周辺を取材すると、地元住民を不安に陥れる多くの“異変”が起きていることがわかった。
富士山の美に魅せられて富士五湖のひとつ、精進湖畔に移り住んだ写真家の栗林秀旭さんが言う。
「移住して11年になりますが、最近はおかしさを感じることが多い。ここ2か月、写真撮影のため頻繁に樹海に入っていますが、同じ猛暑の昨年や一昨年と比べても、体感気温が高い。富士には約150の洞窟がありますが、その多くで氷が溶けています。生態系にも異常があり、これまで頻繁に見られたオシドリやカメムシが極端に減っています」
山中湖写真ギャラリー主宰の冨塚晴夫さんも同意する。
「スズメバチも少なくなりました。また東日本大震災の4日後に起きたM6.4地震の影響で富士山の山体が緩んだのか、時折山崩れが起きています。27年こちらにいるけど、どちらも初めての経験です」
栗林さんは最近、地震の発生前に現れる「地震雲」をよく見かけるという。その代表が「天使の輪」と呼ばれる6つの“ちぎれ雲”だ。
「この雲が現れると数日後に地震がありますね。ここ数年、それ以前に見られなかった異様な地震雲が空を覆うことが多くなりました。
通常の雲はすぐに流れていきますが、地震雲は2~3時間形を保ったまま空に浮かびます。ぼくの知り合いの地震学者もみな気味の悪さを感じています」(栗林さん)
動物の異常行動にしても地震雲の出現にしても、確立した研究はなく、科学的には証明されていない。しかし、実は東日本大震災の前にも動物や雲の異変があったことが知られている。カラスが鳴き叫び、クジラは砂浜に打ち上げられた。地震雲もやはり現れたという。
琉球大学名誉教授(海洋地震学)の木村政昭さんは、地域住民の“体感”には科学的な根拠があると言う。
「洞窟の氷柱が溶けるのは、富士山のマグマ活動が活発になっているためでしょう。頻発する地震もマグマの影響と見られます。他にも割れた地表から地下水が発生する“水噴火”や河口湖から天然ガスの噴出などもあり、科学的にも富士山の噴火が近づいていると推測できます」
※女性セブン2012年9月13日号