吉本芸人のナマポ(生活保護)受給問題はもはや“過去の出来事”となりつつあるが、依然として日本の社会保障制度を語る上で避けて通れないテーマだ。
現在も6都道府県で最低賃金収入が生活保護を下回る「逆転現象」が続き、国会や厚労省では支給額の引き下げが議論されている。 が、この「ナマポ」論争で放置されている問題もある。
「保護費を受け取った人が、役所を出た途端に付き添いの男にカネを巻き上げられている光景は珍しくない」
都内のケースワーカーはそう証言する。本来は借金の返済には充てられない生活保護費(受給前の債務整理が原則)が、なぜか“返済資金”になっているのである。
本誌は都内のある暴力団関係者から驚くべきマニュアルを入手した。「ご案内」という表題の紙には、
〈住居のある者は部屋をゴミ屋敷化します(こちらが訪問指導します)〉
〈金目の物がある場合、こちらの専用倉庫で預かります〉
〈住居のある者でも基本的に○○区、□□区、△△区に移転してもらいます〉
など、「生活保護費を受け取るための手順」が詳細に記されているのだ。
「アイツら(受給者)は全部紙で教えてやらないとわからないからね。こっちは役所の担当者の性格や口癖まで把握しているから、(受給を)認定させるのは簡単だよ」(暴力団関係者)
特に「模擬面接」は手が込んでいる。
●親戚や友人で助けてくれる人は→全くいません
●手持ちの現金は→100円とちょっとです(ポケットから小銭を出して見せる)
●体調はどうですか→最近は何も食べていないので、動く元気もありません(担当者の指示に従うこと)
といった想定問答をもとに、〈こちらがOKを出すまで何度でもやります〉との注意が書き添えられている。ケースワーカーの家庭訪問については、〈2、3日前より部屋の中に生ゴミ等を放置してください〉〈職員が来たら布団に横になるなど体の具合が悪いことをアピールしてください〉と、実に具体的だ。また、〈支給日は必ずこちらが役所まで送迎します。個人で取りに行かないこと(罰則あります)〉とある。
「10万円以上の“月給”を得る方法を教えるのだから、回収しなくては割に合わない。支給日の1週前に3万円を貸して、支給されたら5万円を返させるというような金貸しもする。日銭に困っている連中だから、喜んで借りていくよ」(同前)
こうして闇社会に消えていく生活保護の原資は、もちろん国民の税金だ。議員も役所も「支給額カット」という安直な議論の前に、不正受給の「流れ先」を洗い出すべきだろう。
※週刊ポスト2012年9月14日号