共産党による独裁のもと、経済成長を推し進め、極限にまで肥大化した中国に貧富の拡大や腐敗などの大きな病巣が広がっている。ジャーナリストの富坂聰氏が報告する。
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中国の問題は、中国の未来を信じていない中国人が多いということだ。
過去日本において、賃金の上昇や為替レートが円高に振れた時は、徹底したコストダウンなど企業努力で競争力を維持してきたが、中国の場合は富を持つ者が見切りをつけて富を国外へ持ち出している。
今後、大規模な財政出動で経済発展を遂げようとすれば、予算はいくらあっても足りない。また、社会の急激な高齢化に備える一方で、個人消費を刺激するならば、年金制度の充実や医療保障制度の完備も欠かせない。これにも原資が必要だ。
必然的に取れるところから税金を取るしかなくなる。つまり今後の中国は、金持ちに厳しい国になるということだ。
実際、すでに増値税(物品の販売や加工、輸入を行なう場合に適用される税金)はその適用範囲が広げられているし、外国人から社会保障費を徴収しようという動きも見られる。そのため、金持ちは中国で踏ん張って頑張ろうとはせずに、真っ先に逃げ出す。
昨年、話題となった温州の夜逃げ事件では、温家宝首相が3回も(1回は鉄道事故だが)現地入りして火消しに躍起になったが、それほど夜逃げを警戒している。
経営者同様、裏金をためこんだ役人のなかにも、妻や息子を海外に移住させ、先に財産を移転させておき、いざとなったら体一つで“高跳び”できるよう準備をしている「裸官」が激増している。彼らは何かが起きれば、怒濤の如く海外に逃げ出すだろう。
※SAPIO2012年9月19日号