民主党政権の弱腰ぶりが尖閣諸島を危機に晒す中、実効支配強化に向けた歩みを進めているのが東京都である。渦中の猪瀬直樹・東京都副知事を直撃した。猪瀬氏はどのようなプランがあるのか。報道写真家の山本皓一氏が直撃した。
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――香港の活動家らによる魚釣島上陸と、その後の政府の対応をどう見ますか。
「メドベージェフ・ロシア首相の国後島上陸(7月)、李明博・韓国大統領の竹島上陸(8月)とひと繋がりで考えれば、無策な民主党政権が消滅する前の“駆け込み需要”と言えます。現政権が終わらないうちに、既成事実を積み上げておきたいという意図が感じられる。
また、上陸時の対応でも明らかなように、海上保安官が陸上で捜査・逮捕権限を行使するための海上保安庁法改正が急務なのに、国会で店晒しにされている。だから先に上陸していた沖縄県警に逮捕させたのです。結局、尖閣防衛の意思もビジョンも見えないまま、泥縄的対応に終始しています」
――都では購入に向けた現地調査を実施する方針ですね。
「海保の巡視船に見劣りしない2000tクラスの大型船をチャーターし、土木や環境、海洋調査の技官ら専門スタッフを連れて行きます。2日ほど滞在し、測量や資源・環境調査などを行ない、灯台や船溜まりを建設できるかどうかなどを検証します。15億円近い寄付をしてくれた国民の思いに応えるべく、準備を進めます」
――購入後は、どんな計画を実行する予定ですか。
「香港の活動家らの上陸で、尖閣海域を無人のままにしておくことの危険性を改めて実感しました。やはり、有人化に向かって動かなければならない。まずは、あの海域で漁業を営む漁船のための灯台、無線の中継基地などの建設を考えています。
特に、避難のための船溜まりは北小島と南小島周辺に作れそうです。海が荒れやすい海域なので、漁師が安心して仕事ができる環境を整えることが先決です。また、野生化し800頭まで増えたヤギの駆除も手掛けるつもりです」
【猪瀬氏の話を受けての山本氏の意見】
都はすでに山田吉彦・東海大学教授を専門委員に起用し、「購入後」にどう尖閣諸島を守るかの青写真を描き始めているが、私は、今すぐにでもできることがあると思う。
例えば、日米合同演習を尖閣周辺海域で行なう、自衛隊のレンジャー訓練を魚釣島で行なう、など。あるいは同海域にブイと結んだ無線中継基地をいくつも投下して、漁業者たちが安心して漁をできるようにすることなどだ。
中国は周辺海域で漁業監視船や海軍の活動を活発化させている。日本で尖閣の防衛について議論が盛り上がっていることに焦っている証左だろう。彼らはますます圧力を強めてくるだろうが、こうした対策が現実になれば、中国の太平洋進出という野望はまさに「壊死」する。だからこそ我々は、一刻も早く手を打たなければならないのだ。
※SAPIO2012年9月19日号