持っている会社は30社、従業員は5400人、自宅は25軒で、東京ドーム170個分の土地を持つ日本人がバリ島にいる。地元で「アニキ」と呼ばれる丸尾孝俊氏(46歳)である。
極貧の幼少期を送り、中卒で就職して以来、あらゆる仕事を渡り歩き、不動産ディベロッパーとしてバリで大成功。極貧生活からのサクセス・ストーリーを記した著書『大富豪アニキの教え』はベストセラーとなり、「アニキの話を聞きたい」と年間800人の日本人が訪れるというカリスマだ。
そんな人が本当にいるのだろうかと疑念を抱く真正デフレ世代の本誌新人記者(♀)が、アニキの正体を暴くべく、バリへと飛んだ。
東京から5600キロ離れたバリ島へは、満席すし詰め状態のエコノミークラスに揺られること7時間。
空港を出ると、アニキの部下と思われる、人懐っこい笑顔を見せる若い男性が出迎えに来てくれた。彼の車に乗っていざ出発。疑惑のアニキ邸までは、空港から3時間ほどかかるといわれていた。そこで、驚きのひと言が。
「キョウハ、パトカーガ、センドウスルノデ、フツウヨリ、ハヤクツキマス」
え? いまなんていった?
記者が驚いている間もなく、空港を出ると、車の前には青いランプを点灯させた一台のパトカーが。「ウ~ウ~」とサイレンを鳴らしながら、猛スピードで進んでいくではないか。路上の車は端に寄り道を空けてくれる。もちろん信号が赤でもおかまいなし。なんと2時間でアニキ邸に到着。パトカーの威力、いやアニキの威力、恐るべし。
立派な門の前にはSPがうろうろしている。入っていいのか、迷いながらも、門をくぐると、目の前には、広い庭、水が絶えず流れるプール、ガラス張りの謎の部屋……リゾートホテルと見紛うばかりのここが、まさしくアニキの家なのだ。
「良く来たなぁ~。入り~。今から踊りやるねん」
にこにこ顔で出てきたアニキは、自己紹介もそこそこに庭へと連れ出す。そこでは、地元の子供たちが美しい化粧を施し、ジェゴグというバリ伝統の踊りを舞っていた。
「あの子らはなぁ、うち専属の踊り子たちなんや」
無邪気に笑うアニキ。専属ですか? 踊り子さんたちは、代わる代わる何人も登場。30人は下らない。しかもみんなかわいい子ばっかり。週に数回、アニキ邸の庭で踊りを披露し、お客さんをもてなすのだとか。
本誌記者も踊り子さんに手を引かれ、ダンス(にはとても見えなかったと思うが)を楽しむと、アニキがひと言。
「腹へっとるやろ。いまボカーンとうまいもん出てくるからな」
その言葉通り、出てきたのは、豪勢なロブスターの山! 他にも、インドネシアの名物料理・ナシチャンプルなど、ボカーンとご馳走がズラリ。思わず食べ過ぎてしまった。「金持ちはケチ」なんてウソだと確信した。
※週刊ポスト2012年9月14日号