価格比較サイトが一般的になり、同じ条件の商品やサービスであれば、価格の1番安い店やサービス提供会社を簡単に選択できるようになった。それはわかりやすく、合理的で、おトクな買い方だが、事前に自分の使い方や用途に合った商品を的確に判断する必要がある。しっかりリサーチして、用途と価格の折り合いをつけ、ようやく手に入れてみたら、意外と使い勝手が悪くてムダな買い物になってしまった――ということはないだろうか?
日本中古自動車販売協会連合会が全国の20代~60代の男女2000名を対象に、「『あのひと』買い実態調査」を実施した。「『あのひと』買い」とは商品やサービスによって、“家電なら○○さん”など特定の店舗・販売員(=あのひと)から購入する買い方。対して価格やグレードなどだけを判断基準に購入するのは、「スペック買い」ということになる。
記者も「『あのひと』買い」の経験があるが、「好みをわかっている」「これまでの購入履歴から、重複や使い方を考えたアドバイスをくれる」「駆け引きせずに、割引やサービスできるラインを最大限提示してくれる」などのメリットがある。
まったく同じ条件であれば、価格は安い方がいい。しかし好みや購入履歴を理解していることからの細やかなサービスというのは、お金で買えないメリットだ。また実際の価格面でも「お得意様価格」などで、価格比較サイトでチェックした金額に近くなるケースもあるだろう。
こうした「『あのひと』買い」には、ただ消費活動を行なう以上の楽しみがあるのかもしれない。同調査の結果でも「『あのひと』買い」を「行なっている」と回答した人は35.4%。年代別では年齢が高いほどその傾向があるが、「今後、特定の『あのひと(販売員)』の存在が欲しいか」という質問には、全ての年代の50%以上が「欲しい」という意見で、全体の52.4%が「あのひと」といえる販売員の存在を求めているとわかった。
現在「『あのひと』買い」を行なっている人が実際に購入しているもの上位は、1位「自動車」47.4%、2位「家電」36.6%、3位「洋服・靴」28.0%、4位「化粧品」14.0%、5位「金融商品(保険・証券・貯蓄など)」13.8%。年代や性別によるバラつきはあるだろうが、“長く使うもの”“アフターフォローやアドバイスに重点をおきたいもの”といったケアが必要な商材が上位に入った印象だ。
例えば、同調査を実施した日本中古自動車販売協会連合会は、ユーザーから「あのひと」と思われる人材の育成・認定するため、「中古自動車販売士」の資格制度を実施。事故の有無やコンディションなど測りにくい要素も多い中古自動車は、購入する際に迷いやすく、アフターフォローも必要ということもあり、顧客の要望や不安に寄り添いながら、専門知識を駆使して納得できる買い物をサポートしてくれる存在は、「あのひと」になる可能性が高い。
“いい商品を安く買う”というのは、買い物の楽しみのひとつだ。しかし50%以上の人が「あのひと」を求めている状況は、消費者が価格などのスペックだけでなく、“「あのひと」が勧めてくれて、自分に合うものを買えた”という納得感が、商品へのロイヤリティと同じくらいの価値を生む可能性を示している。
価格競争によって疲弊する日本の経済状況において、価格などのスペック以外に価値を見出す「『あのひと』買い」という消費行動は、企業にとっても注目すべきファクターといえるだろう。