スポーツ新聞が魅力を失っている。たとえば批判記事があまり出ないのはなぜか。一例を挙げると、もはや守備の“穴”でありながらも試合に出続けている阪神・金本知憲を批判しない在阪紙には、阪神ファンですら違和感を覚えている。現場をよく知る4人の記者を集め、スポーツ紙の現状を語ってもらった。
――批判記事が出ないのはなぜか。
Cデスク:色々事情はあるけど、一番の問題は選手と記者が馴れ合いになっとる部分かな。「仲良くなる」ということを勘違いしているのかも。
Aデスク:昔は、選手や関係者と強固な関係を作ることで信頼され、ある意味何でも書けたから面白かった面はある。長嶋茂雄さんなんて、「新聞の中の僕はもう一人の僕だから」なんていって、キャラクターを合わせてくれた。
B記者:金本はよく記者を食事に連れて行ってくれる面倒見のいい男。すぐ好きになってしまう選手です。最近の若い記者は素直な子が多いから、それだけで悪口は書かなくなる。選手にとっちゃ楽だろうね。
D記者:とはいえ、自由に書いていいのであれば書く記者はいるでしょう。社として批判記事は書けない、というのがあるのでは。球団との関係を重視して……。
Cデスク:確かに最近は、何か取材相手にコントロールされるようになってきたね。これは野茂英雄が出たときに始まった“悪習”やと思うよ。
――野茂が原因とは?
Cデスク:1990年の野茂フィーバーで、スポーツ紙は毎日でも彼の話題がほしいと群がった。収拾がつかなくなり、球団はちゃんと機会を作るから個々での取材はやめるように、交通整理を始めた。こうなると球団も選手も記者も楽。無理して取材する記者がどんどん減っていったんですわ。
Aデスク:無理して突入し、「出禁(出入り禁止)」になったら取材できなくなるからね。だから記者は団体行動をとり、球団のいうことを聞く。これじゃスクープは出ないよ。
※週刊ポスト2012年9月14日号