マンション住民に限り、メルセデス・ベンツが15分400円で利用できる――。
これは三菱地所が今秋から販売する東京・西麻布のマンション『ザ・パークハウス 西麻布レジデンス』(完成は2014年5月予定)で提供されるサービス。オープンタイプとワゴンタイプの2種類のベンツが敷地内に常時置かれ、住民なら誰でも乗りたいときに15分400円で利用できるという、いわゆる「カーシェア制度」が採用されている。
ベンツに限らず、最近では時間貸し駐車場のタイムズ24がBMWのカーシェアを始めるなど、続々と高級外車が日本のレンタカー市場に参入している。
レンタル市場に参入すればするほど新車販売が落ち込む懸念も指摘される中、果たしてメリットはあるのだろうか。
「欧州車各社はユーロ安を追い風にした値下げを実施したり、日本市場に合わせた割安のモデルを出したりと積極的に販売攻勢をかけています。そうした努力も実り、輸入車登録台数は12か月連続で前年を上回っています。このまま国産車ユーザーの興味を外車に振り向かせるために、レンタルやカーシェアといった形で購買層の裾野を広げようとしているのです」(自動車専門誌の記者)
なるほど、レンタカーやカーシェアを“試乗”と捉えれば、一度は憧れの外車に乗ってみたいと思う人も増えるはず。ましてや、レンタルから販売動機につながればメーカーの思うツボなのだが……。
そもそも外車を借りる行為自体、広く一般的に普及するのかといえば、疑問符をつける識者は多い。モータージャーナリストの清水草一氏もそのひとりだ。
「それは西麻布に住むような住民ならベンツを借りても抵抗はないでしょう。だって、港区民のベンツ所有率は国産車よりも高いので、もっともスタンダードなクルマなんですから。都内の駐車場は高いですし、外車を所有するステータスさえ捨て去れば、カーシェアは極めて経済合理性も高い制度だと思います」
しかし、この経済合理性とベンツという車種の敷居の高さは相容れないものだと、清水氏は続ける。
「レンタルして“チョイ乗り”するには過剰品質ですよね。いまや低燃費の軽自動車の乗り心地だって悪くありませんし、わざわざ大型のベンツで出掛ける必要性もまったくありません。いくら保険がついているレンタルといっても、やはりベンツを借りるとなると、どうしても運転に気を使いますしね。毎日フランス料理を食べるような感覚に近いのかもしれませんね(笑い)」