住民が樹木を切り倒してバリケードを築き警察侵入を阻止した村、政府庁舎に突撃して破壊する若者……。中国では共産党幹部の不正・腐敗への不満が爆発し、権力側の弾圧をはねのけて過激な抗議行動が続発している。最新の動きを評論家の宮崎正弘氏がレポートする。
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昨今、中国で発生している暴動は1日平均500件、年間18万件である。よほど大規模か、参加者に多くの犠牲が出る、あるいは日本企業が狙われるなどのデモ・抗議行動ではない限り報道されることはない。
この5月、筆者は上海空港に降り立った際、空港に座り込んだ住民の抗議行動を目撃した。滑走路近辺の騒音被害を訴え、「この国の政府は何をしているのか」などと書いた大きな紙を広げていた。その示威活動を警察が取り締まろうとする様子はない。従来の中国では考えられない事態が起きていた。
抗議行動・暴動を起こす民衆の不満は、官僚の不正、党幹部の腐敗に原因がある。5月23日、北京で検察機関と党腐敗防止担当委員会、公安、外交部ならびに国際金融機関の担当者が集合して「汚職防止」のための検討委員会が開催された。
徹底した汚職防止の方法を検討するという名目だったが、「会計のごまかし、マネー・ロンダリングの巧妙化、香港の子会社、英領バージン諸島のペーパー・カンパニー」などの諸手口、手段を検証しただけだった。
汚職は減るどころか拡大の一途。公金の横領、恣意的な規制や不公平な建設認可など、庶民の不満は大暴動の導火線となっている。
中国でこれほど暴動が頻発するようになったのは昨年からだ。過激かつ国内に甚大な影響を及ぼした事件を挙げよう。
2011年5月、内蒙古自治区で牧畜に携わる民衆の抗議集会が開かれた。発端は、近年の炭鉱開発によって草原の砂漠化、大気汚染など環境破壊が深刻化したことに抗議したモンゴル人青年が、石炭運搬トラックにひき殺されたことだった。これに怒ったモンゴル人の学生市民らが数千名規模の抗議活動を行ない、10人近い死者が出た。
同月、江西省撫州では政府関連施設で連続爆破事件が発生、省政府ビル前で農地強制収用に抗議して農民が自爆した。6月には山東省徳州市、河南省鄭州市、湖南省来陽市のそれぞれの公安局ビルなど、立て続けに政府関連施設を狙った爆破事件が起きた。それらの事件からは、民衆の共産党に対する怨念がいかに凄まじいかを読み取ることができる。
※SAPIO2012年9月19日号