8月29日に内閣府の有識者会議で発表された巨大地震・南海トラフ地震の被害想定は、死者32万3000人という想像をはるかに超える衝撃的なものだった。また、死者数の約70%が津波によるものと想定されており、特に危険だと言われているのが震源地にも近い静岡県だった。
一方で、大阪市や名古屋市は外洋から半島によって守られているため、今回の想定でも10mを超える高い津波の心配はないとされている。だが、名古屋大学大学院の川崎浩司准教授(津波工学)は、この大阪・名古屋こそ危険なエリアだと警鐘を鳴らす。
「大阪や名古屋は埋め立て地も多く、海抜が低い。しかも、津波が遡上しやすい河川が街の中心を流れています。私は以前独自に、4mの津波を想定して津波被害のシミュレーションを行いました。結果は大阪や名古屋の大部分に津波が流れ込んでしまうというものでした。
今回の想定では、大阪や名古屋ではそれよりも1m高い5mもの津波が予想されています。大阪では梅田の繁華街や地下街、地下鉄にまで浸水し、大パニックになってしまうことも考えられるでしょう」
大阪の中心であり、JRや地下鉄のハブ駅となっている大阪・梅田は1日に40万人もの人が行き交うといわれている。逃げ場のない地下に津波が流れこんでしまったら、地下街はダムの底に沈んだも同じだ。政府の発表では、大阪府の死者数の予測は7700人というが、それで済むはずがないだろう。
また名古屋市内には、まだ多くの場所で津波に弱い木造住宅が残っている。日本有数の大都市、大阪・名古屋が一瞬にして津波にのまれ、消えてしまうという事態になりかねないのだ。
※女性セブン2012年9月20日号