スポーツ

WBC 日本が騒げば騒ぐほどメジャーが儲かる構図に変わりなし

 どうやら戦う前から負けた、といわざるをえないのが実態のようだ。WBC参加に至る交渉の経緯について、メジャーリーグに詳しいスポーツジャーナリスト・古内義明氏が解説する。

 * * *
 まさに急転直下の展開だった。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の不参加を決議していた日本プロ野球選手会が一転して参加表明すると、そのニュースは日本中を駆け巡った。

 一方、アメリカでは、ロイターやAPなどの通信社が打電するのみの扱いで、大手新聞社やスポーツ専門サイトが大きく、また独自の切り口で扱ったのは皆無。WBCを巡る報道にも日米の温度差は、依然として存在しているのが現状だ。

 WBCはMLBとMLB選手会が設立したWBCインクが主催社だ。サッカーのワールドカップとの最大の違いは、このイベントが招待試合制をとっている点だ。第3回大会に際して、メジャー側は、日本プロ野球機構(NPB)が参加表明している事実を重視し、NPBと選手会の内部分裂に関しては、「内輪もめ」と一蹴。「たとえ日本が不参加でも、WBCは通常開催する」との見解だった。

 そもそも、選手会の怒りの矛先は、WBCの利益配分についてだった。日本からのスポンサー収入が7割を占めるなか、メジャー側が66%で、日本側が13%という不平等な配分の是正を求めていた。だが、今回もWBC側は1ミリも譲歩しておらず、配分比率は変わっていない。

 ただ、国際関係委員会の島田利正委員長(日本ハム球団代表)が渡米し、WBCのロゴを伴わない「侍ジャパン」のスポンサー権とライセンシー権に関して、メジャー側が日本の帰属を認めことが突破口となり、選手会は不参加の決議を撤回したのである。

 四期連続赤字に苦しむNPBにとって、侍ジャパンの常設化によって得られる新たな収益は喉から手が出るほど欲しい収入源だった。問題はNPB主導で、そのブランド価値を高めるような新規事業を次々に展開できるか、否かだろう。

 例えば、代表選のマッチメイク一つにしても、台湾、韓国、キューバあたりと毎回やるわけにいかない。ファンが見たいのは、メジャーリーガーで編成するアメリカ、ドミニカ、ベネズエラ等の強豪国とのしのぎを削る戦いだ。それが実現できなければ、代表を応援する公式スポンサーも費用対効果で納得せず、テレビ局は視聴率がとれず、関連グッズの売り上げにもつながらないだろう。

 結局、勝ったのは、選手会でも、NPBでもなく、66%の配分を握るメジャーというのが、正直な結論だ。

 WBCはこれまで野球後進国と言われた国々で、メジャーのブランド価値を高める世界戦略の一環に過ぎない。松坂大輔やダルビッシュ有がメジャーのボールパークで活躍すれば、獲得を狙う球団には好都合だし、WBCは選手の見本市という役割も担っている。

 今回のように、日本のメディアが毎日「WBC」を連呼し、騒げば騒ぐほど、メジャーが儲かる構図に何ら変わりはなく、海の向こうから彼らの高笑いだけが聞こえてきそうだ。

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン