「2030年には原発比率を0%にすべき」――政府が8月末までに策定する革新的エネルギー・環境戦略に向けて開催された国民への意見聴取会。参加者の7割が「0%案」を支持したという。それは可能な目標なのか、条件は何か。原発と原子力政策に精通する大前氏が詳説する。
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原発依存度を0%にしたいなら、日本の選択肢は1つしかない。電気使用量を少なくすることだ。といっても、経済活動を妨げるだけの単なる節電ではなく、一気に「5年以内に電力使用量を50%削減する」という目標を打ち上げるのだ。
十分可能な話である。
具体策としては、白熱電球のLED電球への交換を義務付ける、エアコン・洗濯機・冷蔵庫など家電製品の消費電力を半分にすることをメーカーに命じる、スマートグリッド(次世代送電網)を建設する、建物を窓、屋根、床などからエネルギーが漏れない断熱構造に改善するなどが挙げられる。この50%削減を「国策」として推進すれば、5年以内に少なくとも30%の削減は達成でき、産業構造改革の起爆剤にもなるだろう。
電力使用量が半分になれば、日本は原発がなくてもやっていける。ただし、この目標を達成するまでは、安全に動かせる原発は動かし、CO2を排出する化石燃料の火力発電所を減らしていく。不安定な風と太陽への依存は、今の5倍の10%程度に抑える。それこそが「賢者のエネルギー政策」だと思う。
※SAPIO2012年9月19日号