この半年ボックス圏相場が続き、1オンス=1600ドル台後半で推移している金相場だが、今秋から年末に向けて大きな動きをみせるかも知れない。円高が続くいま、日本人は金投資のスタンスをどう考えるべきか、金価格の動向に詳しいマーケット ストラテジィ インスティチュート代表取締役の亀井幸一郎氏が解説する。
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金市場がアメリカの「QE3(量的金融緩和第3弾)」待ちという状態が1年も続いている。おそらく米連邦準備制度理事会(FRB)は今秋にも、QE3に踏み切ることになる可能性が高いだろう。そのアメリカだが、国債発行額が連邦債務の上限に迫り、議会で何らかの妥協案が成立しない限り超緊縮財政に追い込まれるという「財政の崖」問題に直面している。QE3、財政の崖はともに金価格を押し上げるが、さらなるドル安にもつながる。
円に対するドル安はまだ底打ちしておらず、引き続き、円は強いだろう。アメリカの財政問題がこれから市場の関心を集めるのであれば、年末年始も引き続き、ドル安円高が予想される。
日本国内の金価格はドル/円相場の影響を受ける。近年、ドル建て、ユーロ建て金価格などが軒並み史上最高値を更新しているが、日本国内の金価格は、円高で相殺されるため比較的緩やかな上昇にとどまっている。
8月現在、米ドル建て金価格は1600ドル台後半、円建て金価格は4000円台前半(1グラム当たり)で推移している。昨年8月の円建て金価格の高値は約5000円だったので、この1年間で円建て金価格は2割近く下がっていることになる。
日本の投資家は、金価格がなかなか上がらないと感じるかもしれないが、上がらない今だからこそ、金は「買い」という見方もできる。欧州の債務危機やアメリカの財政問題がこの先も簡単には片付かないことを考えると、結果的に金価格は上がっていくのではないだろうか。上昇をしていかない現在の状況は、「買い場は続いている」ということを示唆している。この水準であれば、金購入を検討してもよいタイミングといえるだろう。
※マネーポスト2012年秋号