『メルマガNEWSポストセブン』では、ビートたけし、森永卓郎、勝谷誠彦、吉田豪、山田美保子といった様々なジャンルで活躍する論客が、毎号書き下ろしで時事批評を展開する。ここでは9月7日に配信された30号より「吉田豪の今週のオピニオン」の一部を公開する。
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ジブリ映画『もののけ姫』の主題歌のヒットで知られる米良美一が、最近、“吹っ切れている”と評判だ。バラエティー番組では、着けていたカツラをボウリング球のように投げられたり、オシメをつけてベビーカーに乗せられたり…。
米良は世界的なカウンターテナーでお笑い芸人なんかではない。なぜ、バラエティー番組で躍動しているのか? その答えは彼の心の変化にある。自身の生い立ち、肉体的な障害、性別を超えた恋、松田聖子のこと…。プロインタビュアー・吉田豪にすべてを語った──。
──そんなカウンセリングの成果もあってか、米良さんの話にはただきれいな道だけを歩いてきた人には出せないリアリティーがありますよね。
米良:フフフ、すみません(笑)。吉田さんだからそうやって取ってくださるけど、僕はやっぱりこういうことをしゃべらなきゃいけないから、バラエティーに出ても、ああいうとんねるずさんの昨日の番組(編集部注:8月2日放送の『とんねるずのみなさんのおかげでした』)とかはやりやすいんですけど…。
──何か演じるのだったらやりやすいけど、トークだと難しいですよね。
米良:難しい!
──短い時間で下手に言うと誤解されるだろうし。
米良:そうそう。でも、そんないい話聞きたくない、みたいなところもあるから(笑)。
──いい話8で笑い2ぐらいにしたいけど、それだけ長いトークはテレビでは求められてないっていう。その結果、さんまさんの特番でも、ほぼしゃべらずで。
米良:そうだったんですよね。うまくできなくて。
──「生まれ変わるなら女を選ぶ」って答えてたのは正直でよかったですけど(笑)。
米良:あれはそうですね、「お母さんになりたい」なんて、またわけのわからないことを言って(笑)。
──隣にいたダンサーの方がまたおもしろかったじゃないですか。みかんを上から剥くかお尻から剥くかって話で、「お尻からです。指はお尻のほうが入りやすいから。ね、米良さん?」みたいな不思議なトスの上げ方をして(笑)。
米良:僕もあのとき「そうだよねーっ!」とか言ってればよかったんだろうけど、僕もダメね。素人になっちゃって。吉田さんとかやっぱりすごいなって。
──いや、ボクも素人だから全然ダメですよ。
米良:でも、やっぱり頭の回転とか人間性が僕なんかよりも鍛えられていらっしゃるから、言葉に強さもあるし、言うべきことをちゃんといってらっしゃるじゃないですか。爆笑問題の太田(光)さんにちゃんとああやって言えるっていうのが。
──ああ、ボクが奥さんの太田光代社長から3回結婚を申し込まれたって話ですよね。あの話、じつは太田さんがホントに言われたくないことだってことは聞いてたんですよ。だけど腹を括って踏み込まなきゃいけなくて。
米良:それがよかったんですよ! だから僕も踏み込まなきゃいけなかったんですよ。ああいうときはいかなきゃいけないんだけど、なんかまだうまくいかないんです。
■撮影/林鉱輝