領土問題によって日中、日韓関係が揺らいでいる。中韓の「増長」は日米関係の劣化が原因とジャーナリストの須田慎一郎氏は分析する。以下、氏の報告である。
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尖閣諸島問題にしろ、竹島問題にしろ、大マスコミは日中、日韓関係の悪化ばかりを取り上げる。だが、本当に危惧すべき問題はそこではない、と外務省幹部は言う。「一連の外交で日本が守勢に回っている理由ははっきりしている。一にも二にも日米関係がかつてないほど冷え込んでいるからに他ならない」
8月15日、香港の活動家が尖閣諸島に上陸した一件は、様々な形で野田政権を揺るがすことになったが、野田官邸にとって最もショックだったのは、頼みの綱とも言える米国が、終止冷淡な対応をとったことだった。
米国務省のヌランド報道官は、尖閣諸島の領有権に関する米国政府の立場について、「特定の立場をとらない」と強調してみせた。「ここは最低でも、『懸念している』という発言が欲しかった。あれでは、中国側に誤ったメッセージを送ることにもなりかねない」(外務省幹部)
そもそもオバマ政権は、尖閣諸島は日米安保の適用対象だと明言してきたはずだ。にもかかわらず、なぜそのような発言が出てきたのか。
「近年の日本の首相が、ホワイトハウスとの間にきちんとした信頼関係を築けていないことが最大の要因だ。我々もホワイトハウスや国務省の担当者から、たびたび『なぜこうも毎年毎年、首相が変わるのか。これではまともな外交なんてできない』といった発言を聞かされる」(前出同)
しかも民主党政権は、米国の神経を逆撫でするようなことばかりやってきた。鳩山元首相の在沖米軍基地の「県外移転」構想や、今は民主党を去った小沢一郎氏が引き連れた大訪中団に象徴される親中外交などだ。
「アメリカの極東エリアの基本戦略は、『日中接近は許さない』ということに尽きる。これは、民主党も共和党も一緒だ。そうなると今の日中関係はアメリカにとってウェルカムな状況なのだ」(米国務省担当者)
日米関係は確実に劣化している。
※SAPIO2012年9月19日号