チャイナウォッチャーの間で、江沢民・前国家主席の隠退生活に関心が集まっている。その生活は公式にはほとんど報道されないものの、最高指導部人事などにもいまだ隠然たる影響力を持っているためだ。
江沢民氏といえば、本来ならば、2002年秋第16回党大会で引退し、すべてを胡錦濤主席に任せるべきところを、軍事委主席ポストに居座って事実上の院政を敷き、胡主席の頭越しに超然たる権力を振るったことで知られる。
2005年に国家中央軍事委主席ポストを手放して、隠退生活に入ったものの、ことあるごとに、政治や軍の決定に口をはさみ、2009年10月の建国60周年記念の軍事パレードでは胡主席と並んで中央に坐り、いまだに最高指導者然と振る舞ったことには、国民からも顰蹙を買った。
そのような目立ちたがりやの江氏の生活に変化がみられたのは2010年後半からで、動静がほとんど伝えられず、昨年7月には香港ATVが死亡説を報じ、産経新聞も死亡の号外を出したほどだ。しかし、その年の10月の辛亥革命100周年記念式典に姿を現したのは周知の通りで、死亡説は誤報だった。
では、最近の生活はというと、ニューヨークを拠点に中国情報で定評があるニュースサイト「多維新聞網」は「江沢民は現在、ほとんど上海の邸宅で生活しており、読書にいそしむ毎日だ」と報じている。最近も中国の電子工業の歴史を記した本の序文を書いたり、生まれ故郷の江蘇省揚州市で地震があれば、市幹部に直接電話をして慰問をするなど好々爺ぶりが際立ってきたという。
さらに、同サイトは、江氏と上海交通大学の同期で、いまも親しく付き合っている余力・同大教授の話として、「江沢民はもともと大学の教員になりたかったのだが、いまもその夢は捨てていない。いまも本を読んだり、講義録を作るなど、そのための準備をしている」と伝えた。
江氏はすでに86歳だが、教員デビューも近いかもしれない。